バッティング 腰の回転

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腰の回転による体幹の捩り

踏み出し足側を軸に腰を回転させる

  • 足踏みをする中で投手側へ身体を移動させるし、フォワードスイングのために鉛直軸回りに身体を回転もさせる

 

  • これらは主に脚の筋肉の働きである

 

  • それを脚の動きでみると、軸足では横向きのまま投手側へ腰を押していき、脚を内向きに捩り込みながら(内旋しながら)伸ばして軸足側の腰を押す

 

  • ステップして投手側へ身体を一息に押すのではなく、軸足に余力を残して押すのだった

 

  • 余力を残しておかないと投球スピードの違いに対応できないからである

 

  • 一方の踏み出し足では、ステップして着地した後、脚を外向きに開いて(外旋して)踏み出し足側の腰の回転をリードする

 

  • 腰といっしょに外向きに開くのではなく、腰よりも先に開いてリードする

 

  • それぞれの脚をこのように使うと、腰の中心を軸にではなく、投手側に身体が移動していくので踏み出し足側を軸に腰を回転させることになる

 

  • ゴルフスイングでよく言われる「左半身で壁をつくる」という動きである

 

  • そのほうが腰の回転半径を長くできて、ひいてはバットのヘッドスピードも速くできる

 

  • この腰の回転がスイングスピードを速くするために最も重要な動きで、体幹の捩りを戻す回転がその次に重要という

 

  • 続いて腰や肩の回転、体幹の捩りを眺めてみる

 

  • バッティングの構えでは「腰を捩っておくように」と指導され、バックスイングの向きに腰を少し回しておく

 

  • これは腰を回す範囲を広げてエネルギーを多く発揮しようとしているのである

 

  • 一方で、「バックスイングでは肩をあまり大きく回さないように」と指摘される

 

  • 投球を見難くなるし、大きく捩るとすぐに戻りやすくなるという理由からである

 

腰が先に回って、肩は後から追いかける

メジャーリーグの打者
  •  メジャーリーグ打者7名のティーバッティングでの動作を解析した報告がある

 

  • 踏み出し脚を上げる時に腰は18°、肩は30°バックスイングの向きに回していた

 

  • それがステップ着地時になると腰はフォワードスイングの向きに4°、肩はバックスイングの向きに29°になっていたという

 

  • 画像では左から右に時間が流れて、●が腰、〇肩の水平内転の角度である

 

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野球の打撃中の腰部と肩部の回転角度

(画像引用:科学する野球 バッティング&ベースランニング) 

 

 

  • 縦軸の0°は投手に対して打者の肩や腰が横向き、プラスはバックスイングの向き、マイナスはフォワードスイングの向きである

 

  • アメリカの打者にありがちだが、ステップしている間、腰よりも肩をバックスイングの向きに大きく回しているのがわかる

 

  • そして、腰から先にフォワードスイングの向きに回し始めて、肩はその後から回している

 

  • 腰の角度と肩の角度の違いを「体幹の捩り」とするならば、このメジャーリーグの打者は腰をフォワードスイングの向きに回しつつ、肩をバックスイングの向きに回して体幹の捩りを大きくしていた

 

  • 最大で30°程度になっていた

 

  • その後は肩の回転のほうが速いので、インパクトになると角度差が小さくなっていた、つまり捩りが戻ってきていた

 

日本の打者
  • 日本を代表する2人の左打者のフリーバッティングを撮影して、メジャーリーグの打者と同じように水平面内の腰、肩、バットの角度を求めてみた

 

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野球のバッティング中の腰、肩、バットの角度変化

(画像引用:科学する野球 バッティング&ベースランニング) 

 

 

  • 180°を投捕方向(横向き)としているので、90°で投手と正対することになる

 

  • バットが回転し始める前をみると、両打者ともにバックスイング向きに腰を20°、肩を40°回していた

 

  • つまり、体幹を20°程度捩っていたことになる

 

  • 両者ともに腰よりも肩を大きく回していたが、打者 Y.T. はメジャーリーグ打者のように肩をさらにバックスイングの向きに回していた

 

  • そして、両者ともに腰から先にフォワードスイングの向きに回していたが、回すパターンは少し違っていた

 

  • 打者 H.M. は腰を速く回して、インパクト前にはその回転を終えていた

 

  • 肩も早い時期から加速させて腰とともに回していくパターンであった

 

  • 一方、打者 Y.T. はインパクトまで一定の速度で腰を回していた

 

  • 肩の角度を維持して捩りを一旦大きくし、その後、肩を加速させるパターンであった

 

  • 両者ともにインパクト前に捩りが戻っていた点はメジャーリーグ打者の報告とは異なっていた

 

  • つまり、肩の回転が腰の回転を追い越していたのである

 

体幹をすばやく捩ってすばやく戻す

肩を残して腰を回す
  • ティーバッティングでこの体幹の捩りを詳しく検討した報告によると、捩りの大きさとバットのヘッドスピードとは関係なかったが、すばやく捩りをつくる打者ほどバットのヘッドスピードは大きかったという

 

  • しかも、そういう打者はすばやく捩りを戻す傾向にもあったという

 

  • 体幹の捩りは大きさだけでなく、すばやく捩ってすばやく戻すことがバットのヘッドスピードに貢献するという話である

 

  • 体幹をすばやく捩るというとバックスイングの向きに腰を回して捩ると思いがちであるが、そうではない

 

  • 肩を残して腰を先に回すから捩りができるのである

 

  • この腰を先に回すのをすばやく、ということである

 

SSC
  • 筋肉の使い方に伸展-短縮サイクル(SSC:Stretch-Shortening Cycle)という使い方がある

 

  • 通常、筋肉は短くなって力を発揮するが、短くなる前に一度伸ばすという使い方である

 

  • こうすると、短くなる時に大きな力を発揮できるし、エネルギーを節約できて運動を長続きさせることもできる

 

  • ただし、こうした効果を得るためには条件がある

 

  • それは、使う筋肉を一度伸ばす局面で活動させておくことと、伸ばしてから短くする切り替えをすばやくすることである

 

  • 野球のバッティングで体幹をすばやく捩ってすばやく戻すのはこうしたSSCの効果を狙っているのである

 

  • 現に、野球選手の外腹斜筋の厚さを測ってみると、体幹の捩りを戻す側、右打者でいえば左側の筋肉のほうが厚いという

 

  • 筋肉が太くなるためには強い力を出さなくてはならず、使う筋肉を一度伸ばす局面で活動させておく(伸張性筋活動)ことを繰り返すとよく見られる効果である

 

身体を回転させるのではなく、バットを回転させる

  • 体幹と腕の回転がバットのヘッドスピードにどう貢献するのかをみた報告によると、フォワードスイング前半では体幹の回転、後半では手首の回転がバットのヘッドスピードの大部分を生じさせているという

 

  • 踏み出し脚を着地する時には肩の開きを抑えて、また、バットのヘッドスピードの増加もできるだけ抑えて、インパクトまで加速させるための距離を保つ

 

  • そして、フォワードスイング前半、腰の回転に遅れないように胸部を回転させることで体幹としての回転に勢いをつけ、バットのヘッドスピードを急増させることが重要という

 

  • こうして腰の回転と体幹の捩りを戻す回転によって身体全体としての回転の勢い(角運動量)は大きくなるが、インパクトまでその勢いを続けるわけではない

 

  • フォワードスイング後半にはバットの回転の勢いに移していくことになる

 

  • バットの回転に移せば、その反作用を受けて身体の回転の勢いは弱まる

 

  • 野球のバッティングでは身体を回転させるのが目的ではなく、バットを回転させるのが目的である

 

 

参考文献

科学する野球 バッティング&ベースランニング (ベースボールマガジン 2016年12月25日 平野裕一)