ピッチング 遠投とスピード・トレーニング

f:id:sakuraiku:20210715094757p:plain

 

                                

 

 

 

 

 

遠投とスピード・トレーニング

速投と遠投の投げ方の違いは上胴の傾きにある

  • 遠投は、全身、特に脚や腰を大きく使って投げるようになる効果、ゆったりとバランスよく投げられるようになる効果があるとして、投手の練習に取り入られている 

 

  • 昔から取り入れられているから練習するとうのではなく、その特徴を知って遠投を練習に取り入れるかどうかを決めたい

 

  • 5m先のネットに向かって速いボールを投げる動作(速投)と、できるだけ遠くまで投げる遠投の動作とを比較した調査がある

 

  • それによると、遠投では後ろに、そして投げる腕とは反対側に上胴(肩から肋骨下までの胴体)をより大きく傾け、そして体幹をより大きく捩る傾向にあったという

 

  • 画像は、踏み出し足を着地した時と、ボールリリースした時の上胴の動きを模式的に示したものである

 

 

f:id:sakuraiku:20210715093656p:plain

踏み出し足着地時とボールリリース時における速投と遠投の動作

(画像引用:科学する野球 ピッチング&フィールディング)   

 

 

  • 上段が前後の傾き、下段が左右の傾きになっている

 

  • 左列の速投に比べると、右列の遠投での上胴は確かに後ろにそっくり返っているし、投げる腕とは反対側に傾いている

 

  • ボールを遠くまで投げようとすれば斜め上向きに投げるので、上胴は後傾し、捩りを大きくするのは当然である

 

  • ただし、踏み出し足の着地からボールリリース時まで上胴の動く範囲をみると、両者は変わらず、腰で上胴の傾きだけを変えているということになる 

 

遠投で肩の外旋と水平伸展が大きくなることに注意する

腕のしなりと胸の張りをつくる
  • 投手は、肩・肘の動きがどうなるのかは、やはり気になるところである

 

  • 遠投の場合、踏み出し足を着地したときに肘がやや曲がっていたという

 

  • この理由は定かではないが、上胴をそっくり返らせているので、つぎに力を込めるためにはボールを身体に近づけておきたいのかもしれない

 

  • 踏み出し足着地に続く腕のしなし(肩の外旋)は、遠投でより大きかった

 

  • そして、ボールリリースに向けて脇はやや閉められ、肩の外転は小さく、肩よりも腕が後ろになっていった(肩の水平伸展は大きくなっていった)という

 

  • 投げる腕とは反対側に上胴をより大きく傾けるので、こうした違いが生じるのかもしれない

 

肘内側や肩前面の障害には注意
  • こうしてみてくると、遠投では投げ上げるために上胴の傾きや捩りが違い、それが肩や肘の動きにも影響することがわかる

 

  • 具体的には以下の2つがある

 

  1. 肩の外旋が大きくなること
  2. 肩の水平伸展が大きくなること

 

  • こうなることのポジティブな面として、腕のしなりがつくれない投手、胸の張りができない投手の練習法として、遠投は有効な可能性がある

 

  • しかし、ネガティブな面として、肩の外旋は肘内側の障害、水平伸展は肩前面の障害の危険性があるということになる

 

スピード・トレーニングにするための遠投がある

遠投とボール初速度
  • 超最大スピードの発揮および獲得を目的としたトレーニングをスピード・トレーニングと呼ぶ

 

  • 遠投がこのトレーニングになるかどうか調べた調査がある

 

  • 結果によると、70~80m離れた遠投は、ボール初速度が最大になる可能性が高く、しかも水平に近くボールをリリースする動作とは異なるので、スピードの頭打ちを解消する方法としての意義は大きいという

 

  • 動作の異なる点は先に記したように、上胴の傾きや捩りであり、それに伴う肩や肘の動きである

 

ボールスピードへの効果と動作への効果
  • 20~80mまで少しづつ離れた相手に、『できるだけ早いボールを相手に投げなさい』とだけ指示した遠投と、それに加えて『リリース時のボールの角度をできるだけ小さくするように』と指示した遠投とを行わせて、根毛出されたボールのスピードと角度を測定した

 

  • 画像には、両方の遠投でのボールスピードが記されている

 

  • 横軸の距離は相手が立っていた場所であり、◇、〇、△はできるだけ早いボールとだけ指示した遠投、🔷は加えて角度をできるだけ小さくと指示した遠投でのスピードである

 

  • 角度をできるだけ小さくと指示した場合には、40mくらいまでしか投げられないので、そこまでのマークしかない

f:id:sakuraiku:20210715093841p:plain

2種類の遠投タイプによる球速の比較

(画像引用:科学する野球 ピッチング&フィールディング)   

 

  • その結果、遠投の時には20mよりは30m、40mで少しスピードアップするが、その先までスピードが速くなっていくことはなく、角度だけが上向きになった

 

  • 一方、角度をできるだけ小さくと指示すると、同じ距離での遠投の時よりも全体的にスピードが速くなっていた

 

  • そして、居地が伸びれば角度はやや上向きになるが、指示されていたので、その分角度は低く抑えられていた

 

  • 実際に投げていることをイメージすると、低く投げろと指示されるとボールを相手に届かせようとしてよち力を込めることになるので、スピードが速くなるのだろう

 

  • スピード・トレーニングとしてはこのほうが良いはずである

 

  • しかも、動作は実際の投球動作に近いはずである

 

  • したがって、30~40mでできるだけ水平に投げればスピードへの効果70~80mと遠ければ動作への効果ということになる

 

重さの違うボールを併用したトレーニングで効果が表れる

  • スピード・トレーニングとしてすぎに頭に浮かぶのは、ダッシュを引っ張ってもらったり、坂道を駆け下りたりするトレーニングである

 

  • それまで経験したことのないスピードを経験することで神経系に働きかける

 

  • これをアシスティッド・トレーニングという

 

  • ウエイトトレーニングにように通常よりも大きな負荷をかけるレジスティッドトレーニングの逆である

 

  • 野球の投球でのアシスティッド・トレーニングは、軽いボールを投げることに相当する

 

  • スピード・トレーニングだけではなく、重さの違うボールを併用すると効果が表れるのである

 

  • 6週間トレーニングをしたところ、以下の順でボールスピードへの効果が大きかった

 

1:( 重いボール + 普通のボール ) の後に ( 軽いボール + 普通のボール )

2:( 軽いボール + 普通のボール )

3:( 重いボール + 普通のボール )

 

 

『ピッチング ステップ編』の復習をしたい方はこちら

 ⇩

 

 

『ピッチング 腕の振り編』の復習をしたい方はこちら

 

 

『ピッチング 投球動作のタイプ編』の復習をしたい方はこちら

 

 

『ピッチング コントロール編』の復習をしたい方はこちら


 

『ピッチング ボールリリース編』の復習をしたい方はこちら

 

 

『ピッチング 脚と腕のマッチング編』の復習をしたい方はこちら

  

 

 

参考文献

科学する野球 ピッチング&フィールディング (ベースボールマガジン 2016年10月25日 平野裕一)