骨盤マルアライメント 治療

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仙腸関節障害の治療の進め方

  • 骨盤マルアライメントを伴う仙腸関節障害の治療を、次の3相にて行う
  1. リアライン相  :骨盤のアライメント修正する
  2. スタビライズ相 :得られた良好なアライメントを保つための筋機能向上を図る
  3. コーディネート相:骨盤マルアライメントを再発させる動作を修正する

 

  • この治療法を『リアライン・コンセプト』と名づけ、あらゆる関節疾患の治療に用いられる基本的な治療の設計図と位置づけている

 

①リアライン相

  • リアライン相では、骨盤のアライメントをできる限り理想の状態に近づけることを行う

 

  • 理想の状態とは、左右対称に近いこと、両PSISが接近して仙腸関節が離開していないこと、前屈・後屈・回旋などの基本動作において上記の良好なアライメントを保持できることを意味する

 

  • 理想のアライメントの獲得を目指すには、骨盤のアライメントを崩す原因(原因因子)を同定し、それを解決しなければならない

原因因子について復習したい方はこちら

 

  • 原因因子に対する治療を進めた結果、少なくとも前屈・後屈・回旋・歩行・ランニング・片脚ジャンプなど治療室内でできる基本動作時の疼痛が消失するか、動作に影響しない程度にまで疼痛が減弱したことを確認して、次のスタビライズ相に進む

 

  • 理想的なアライメントが得られても痛みが残る場合がある
  1. 患部周辺の癒着リリースが必要になる場合
  2. 仙腸関節周囲の痛みに対して、腰椎由来の疼痛である場合

 

②スタビライズ相

  • スタビライズ相では、リアライン相で得た理想的な骨盤アライメントを保つための筋機能向上トレーニングを行う

 

  • 患者に十分な知識とトレーニング方法を教えたうえで、患者自身に努力してもらう

 

  • その結果、数週間にわたってマルアライメントと症状を再発させないような筋機能獲得を到達目標とする

 

  • 仙腸関節の安定性を高めるうえで、とくに大殿筋と胸腰筋膜への緊張伝達機能、そして多裂筋による仙腸関節圧縮機能が重要となる

 

  • 腹横筋は、前額面で腸骨稜を近づける安定化機能があるが、水平面では寛骨内旋筋でもあるため仙腸関節後部を離開させる作用をもつと推測される

 

  • また、骨盤底筋群は尾骨を前方に引き、仙骨の起き上がり運動を促すため、骨盤輪の安定性の低下するルーズパックポジションに導いてしまうと推測される
  • 以上より、大殿筋と多裂筋の機能が十分に向上し、仙腸関節の安定性が獲得された後、これらの筋機能向上のためのトレーニングを行うことが望ましい

 

③コーディネート相

  • コーディネート相は、競技復帰後にマルアライメントが再発しないような動作パターンを構築することを目的とする

 

  • 特に下肢アライメントの非対称性、下肢の動的アライメントの異常があると骨盤は非対称な運動を余儀なくされ、容易に元のマルアライメントが再発してしまう

 

  • コーディネート相において修正すべき動作はスポーツ動作全般におよぶ

 

  • 骨盤の異常運動に着目した動作分析を行い、わずかな骨盤の異常運動を見逃さないことが重要

 

治療技術

  • 骨盤マルアライメントの治療は以下の5つの方法を行う
  1. 組織間リリース
  2. 補装具療法
  3. 運動療法
  4. 筋機能向上トレーニング
  5. 動作修正

 

①組織間リリース

  • 組織間リリースは、組織間に介在する疎性結合組織を筋膜や骨膜等から切離することを意図して行われる

 

  • 具体例として、大殿筋の深層で、大転子や大腿方形筋との滑走を改善させる技術がある
  1. 一方の手指で大殿筋の下縁をめくるように頭部方向に引き上げる
  2. 反対の手の母指の末節骨先端部掌側を大腿方形筋の深筋膜に密着させて、その表面を擦る
  3. 擦っていく動きが組織の抵抗によって止まったら、そこから先が滑走不全に陥っていると判断する
  4. 滑走不全による抵抗に対して、約1㎜移動範囲でさらに奥に向かって擦る
  5. その位置に母指を保持しておくと、3秒程度で抵抗が急激に小さくなり、最終的には抵抗が消失する

 

②補装具療法

  • 補装具療法は、原則として不安定性に対して使用する

 

  • 骨盤の場合、仙腸関節不安定性症に対して、骨盤ベルトでその安定化を図る場合がある

 

  • 長時間、長期間の使用により、圧迫されている組織の滑走不全を生じさせる危険性があるため注意が必要である

 

③運動療法

  • リアライン相で行う運動療法は、あくまでもアライメント修正のために必要な筋活動に絞って実施される

 

  • 例えば、左右の寛骨が矢状面で前後傾の回転がある場合、前傾側の大殿筋、後傾側の股関節屈筋のエクササイズを行う

 

④筋機能向上トレーニング

  • 筋機能向上トレーニングはスタビライズ相で行うトレーニングを指している

 

  • これは、負か強度の高いトレーニングにおいても良好なアライメントを崩すことなく反復できるような筋活動パターンの構築を目的としている

 

  • スクワットにおいて、寛骨の前傾後傾や下方回旋、内旋を招かないような大殿筋や多裂筋の協調した筋活動パターンを獲得しておくことが必要である

 

  • そのうえで、PSIS間の距離が開大しないことを確認しながら、徐々にスクワットにおける負荷を強くしていく

 

⑤動作修正

  • 動作修正は、マルアライメントの再発を予防することを主たる目的として実施される
  • 動作学習の基本的な流れとして、ゆっくりと正確な動作の反復、その正確な動作のスピードの上昇、そして試合形式などの動作に意識を置くことのできないような練習、という流れで進めることが望ましい

 

 

 

 

骨盤マルアライメントの評価方法について復習したい方はこちら

 

 

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参考文献

骨盤マルアライメントの治療 (Sportsmedicine 2017 NO.189 蒲田和芳)