投球フォーム cocking phase・acceleration phase・follow through phase・足の爪先の方向・下肢の安定感・体幹の利用・左右肩の高さの相違・肘の高さ、肘関節屈曲角度・前腕の回内と回外・上肢の巻き込み
この記事は次のような人におススメ!
- 投球フォームのチェックポイントを知りたい
なぜ投球フォームをチェックすることが大事なのか?
前回は、投球障害肩症候群について共有しました。
投球障害肩症候群は、Over useから肩関節の緩さや位置変位など身体機能の低下により投球動作が変化し障害が起こる場合、未熟な投球動作により起こる場合があります。
投球動作は、投球側下肢に溜めた力を踏み込み足へ移動し、その力を下肢ー体幹ー上肢の回転の力へ連動させ、いかにボールに力を伝達させるかの動作です。
全身を使う高速な動きで、かつ小さなボールを扱う繊細な動きも要求される動作です。
下半身は力強さを、上半身はしなやかな動きを要求されます。
要するに、投球動作は非常に複雑で難しい動作ということです。
肩を痛めたことがある選手は、投球動作の再構築が重要となります。
そのために、まずは投球動作の基本を理解していきましょう。
投球動作の分析
1相:cocking phase
2相:acceleration phase
3相:follow through phase
1相はさらに3つに細かく分類される
- wind up
- early cocking phase
- late cocking phase
1相:cocking phase
- 投球動作の開始から投球側肩関節最大外旋するまで、個人差はあるが、所要時間は平均1.5秒で投球動作の約80%を占めている。
wind up
- 投球のリズムとタイミングを測る
- 打者を牽制するために必要である
- 動作の開始から非軸足の膝が最大に挙上され、ボールがグローブから離れるまで
early cocking phase
- 投球速度を生むための準備段階
- wind up後、非軸足が着地するまでである(foot plant)
- foot plant時、投球側肩関節は外転90°・外旋90~120°・水平外転30°位となる
late cocking phase
- foot plantから投球側肩関節最大外旋位をとるまでである
- このとき、投球側肩関節は外転90±10°、外旋160°・水平内外転中間位となる
2相:acceleration phase
- 投球側肩関節最大外旋からボールリリースまでである
- 約0.05秒を要し、投球動作の2%を占めている
- ボールリリース時、投球側肩関節は外転90±10°・外旋40~60°・水平内外転中間位となっている
- ボールリリースの約0.01秒前から肩関節は急激な内旋を強いられる
- この時の速度は6180°/秒に達する
- ボールリリース時には、肘関節屈曲25°・前腕90°回内・手関節中間位となっている
- オーバーハンド、スリークオーター、サイドハンド、アンダーハンドのフォームに関わらず、ボールリリース時の投球側肩関節外転角度は一定しており、体幹の傾斜・回旋軸などに相違がみられる
- この相が投球動作の中で最も重要である
3相:follow through phase
- ボールリリースから投球動作終了までである
- 約3.5秒を要し、投球動作の18%を占める
- この相の最初の0.05秒で肩関節・肘関節などの減速が生じ、投球側肩関節は水平内転・内旋し、肘関節は屈曲位となる
- 肩関節にはほぼ体重に等しい牽引力が作用している
- 投球側肩関節最大内旋(腕と水平面が平行)を基準として、early follow-through phaseとlate follow-through phaseに分けられる。
投球フォームのチェックポイントとその解釈
障害を起こさない理想的なフォームの特徴を認識し、投球フォームに影響を及ぼす機能障害の評価や、技術的な問題から生じる機能障害を分析することが必要になります。
投球動作は体幹・上下肢を含めた運動連鎖であり、投球フォームのチェックポイントとその解釈を行っていく。
1.足の爪先の方向
- アーリーコッキングからレイトコッキングで発生する体幹の回旋を予期する爪先の方向を観察する
- 爪先が外側に開きすぎたり、内側に閉じすぎたりすることで体幹の回旋や下肢の安定感に影響を与える
2.下肢の安定感
- 下肢の安定感は、体幹の回旋に続く上肢の運動を安定して発揮させる前提となる
3.体幹の利用
- 体幹の利用は、肩肘へのストレスを軽減させるための基本となる
- 下肢、体幹の動きを制限しての投球は肩肘へのストレスが増大する
- 投球側の骨盤から投球側の肩にかけて回転の基本軸を想定し、この回転軸の回りをきちんと回す運動が体幹の利用的な動きである
4.左右肩の高さの相違
- アーリーコッキングからレイトコッキングにかけて投球側と対側に肩の高さの相違があるかどうかを確認する
- 両肩の高さの相違を把握するのは、これに伴う投球側の肘の高さに影響を与えるからである
- レイトコッキングからの肩の高さの投球フォームでは肘も下がってしまい、体幹の回旋を上手く肩に伝えることができず、手投げの状況を引き起こす
5.肘の高さ、肘関節屈曲角度
- レイトコッキングからアクセラレーションにかけて肘の高さが肩の高さと同じであるか、高い位置にあるか、低い位置にあるかを観察する
- 肘の高さが肩より低いケースでは、手投げの状況を引き起こす
- 肘屈曲角度は、レイトコッキングからアクセラレーションにかけて前額面から評価する
- 肘屈曲角度が90°であるか、それより大きいか、小さいかで評価する
- 肘が伸展すればするほど肘への負担は増加する
6.前腕の回内・回外
- アーリーコッキング時の回内位からアクセラレーションの回外位へ運動が発生する
- ボールの面が後ろ向きから前向きに変わるという運動が起こるのが一般的で、この運動がどのように行われているかを観察する
- 肘へのストレスだけを考えると、大きな回外から回内への急速な運動は肘内側へのストレスを増加させる
7.上肢の巻き込み
- フォロースルーにおいて、ボールを投げ終わった後の上肢がどこにあるのかを観察する
- 腕が体幹の中に上手く巻き込まれているかどうかを確認する
- 上肢が体幹の前に残ったままのフォームは、体幹の回旋エネルギーを肩肘で直接的に受けて抑えることになり、肩肘のストレスを大きくする
- 特に肘には遠心力による肘の伸展で肘後方の痛みを助長する場合がある