成長期スポーツ外傷の診断上の注意点 後編

今回は『成長期スポーツ外傷の診断上の注意点』について共有していきます!

 

 

成長期の骨の特徴

  • 成長期の骨の特徴は以下の5つがある
  1. 弾性力に富み、外力の吸収能力がある
  2. 骨膜が厚く強靭である
  3. 仮骨形成が旺盛である
  4. 自家強制力に優れている
  5. 骨端軟骨版を有し、その損傷により成長障害(変形の残存、脚長差)が生じる可能性がある

  • 成長過程では力学的に脆弱な組織が残存し、この時期に靭帯が骨に比較して強靭であるため、靭帯損傷(捻挫)より靭帯の起始停止部における骨軟骨理列骨折の発症が高いことが知られている

 

成長期スポーツ外傷に関する統計

  • 小学生
  1. 足首の捻挫
  2. 手指の突き指

 

  • 中学生、高校生
  1. 足首の捻挫
  2. 膝関節の打撲・挫傷
  3. 手指の突き指
  4. 膝内側側副靭帯損傷
  5. 半月板損傷
  6. 腓腹筋肉離れ
  7. 十字靭帯損傷
  8. 大腿四頭筋肉離れ
  9. 前腕骨骨折
  10. ハムストリングス肉離れ

 

診察にあたっての一般的注意事項

  • 受傷日、競技歴、競技種目、ポジション、準備運動やストレッチ実施の有無、練習の組み立て方、練習量、試合の頻度、利き足・利き手、受傷時の詳しい状況が必要である
  • 成長期外傷の特徴として、軟骨組織で覆われている関節周囲の裂離骨折はX線像には描出されないことがある
  • 骨端軟骨損傷にも注意しながら、四肢の場合は左右両側を撮影して比較検討することが大切である
  • 急性に発症しても、疲労骨折の末期像や離断性骨軟骨炎の骨軟骨片分離などの場合もあるので注意が必要である
  • 診断に迷ったら関節造影、CTやMRI検査を必ず追加すべきである

 

骨盤部

  • 成長期では骨端線が閉鎖していないため、筋付着部の裂離骨折を生じやすいことが挙げられる

 

裂離骨折

  • 裂離骨折は筋肉の急激な収縮により発症する
  • 部位は以下の通り

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  1. 腸骨稜(内・外腹斜筋)
  2. 上前腸骨棘(縫工筋、大腿筋膜張筋)
  3. 下前腸骨棘(大腿直筋膜直頭)
  4. 小転子(腸腰筋)
  5. 坐骨結節(ハムストリングス、大内転筋)
  6. 大腿骨頚部疲労骨折

 

  • 上前腸骨棘、下前腸骨棘、坐骨結節に頻度が多い
  • 14~16歳の男子に多い
  •  上前腸骨棘裂離骨折は、股関節伸展・膝関節屈曲位での縫工筋の収縮により生じる
  • ジャンプやランニングなどの動作で生じ、股関節の屈曲・外転運動で疼痛を訴える
  • 下前腸骨棘裂離骨折は大腿直筋の急激な収縮、一般にはボールを蹴る動作で生じる
  • 股関節自動屈曲での痛みがある
  • 坐骨結節裂離骨折は体操競技や陸上のハードルなど股関節屈曲位・膝関節伸展位でハムストリングスもしくは大内転筋の収縮により生じる
  • 症状は臀部痛で坐骨結節の圧痛があり、座位が取れない
  • ハムストリングスによるものでは膝伸展位で股関節屈曲が困難となる
  • 大内転筋によるものでは股間背う外転が困難となる

 

大腿骨頚部疲労骨折

  • 横断型と圧迫型に分類される
  • 成長期には頚部遠位に生じる圧迫型が多い
  • ランナーに多く、股関節周囲筋群の疲労のため大腿骨頚部にかかる緩衝作用なくなるためとされている
  • 歩行時の鼠径部痛などで慢性に進行し、軽微な外傷で骨折を生じてから救急搬送される例がある

 

手・手関節部

突き指

  • 野球、バスケットボール、バレーボールなどの競技で生じる
  • DIP関節の伸展ができなくなった状態で、伸筋腱損傷、末節骨骨折を伴う傷、骨端線離開がある

 

PIP関節脱臼骨折

  • PIP関節軽度屈曲位にて指先部より長軸方向に外力が加わって生じる
  • X線検査では診断は容易な場合が多い

 

腕部

前腕骨骨折

  • 橈骨骨折、尺骨骨折があげられる
  • 若木骨折や竹節骨折など成長型特有の骨折型がある
  • 尺骨骨折ではモンテジア骨折を疑って肘関節のX線撮影を行う

 

肩関節部

  1. 肩関節脱臼
  2. 肩鎖関節脱臼
  3. 上腕骨近位骨端線離開
  4. 上腕骨骨幹部骨折
  • いずれも外傷歴ははっきりしており、臨床症状とX線検査で容易に診断はできる 

 

参考文献

成長期スポーツ外傷の診断上の注意点 (関節外科 Vol.32 No.3 2013 一戸貞文)