胸腰筋膜

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野球選手のための解剖学シリーズ!

今回は『胸腰筋膜』について共有していきます。

 

 

胸腰筋膜とは?

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  • 胸腰筋膜は、深筋膜に属する
  • 深筋膜は、交織密性結合組織であり、一方向だけではなく多方向からの張力に対して適応性がある
  • 上方では前鋸筋前方を通過し、頸背部の深頸筋膜の浅層と連続している
  • 胸部では胸腰筋膜は脊柱の伸筋群を覆う薄い線維性膜となっており、脊柱と上肢を結ぶ筋と脊柱の伸筋群を分けている
  • 内側では胸椎の棘突起に付着している
  • 外側では肋骨角に付着している
  • 腰部では3層構造となっている
  • 後葉は腰椎と仙椎の棘突起および、棘上靭帯に付着している
  • 中葉は腰椎横突起の先端と、横突間靭帯に付着し、下部は腸骨稜に、上部は第12肋骨の下縁と腰肋靭帯に付着している
  • 前葉は腰方形筋を包み、内側は大腰筋の外側部の後ろで腰椎横突起の前面に付着し、下部は腸腰靭帯とそれに隣接する腸骨稜に、丈夫では外側弓状靭帯を形成している
  • 後葉と中葉は合わさって脊柱起立筋の外側縁で強い縫線を形づくっている
  • 腰方形筋の外側縁では前葉と合わさって腹横筋の起始腱膜を形成している
  • 仙骨のレベルでは後葉は後上腸骨棘と腸骨稜後部に付着し、その深部の脊柱起立筋の腱膜と融合している
  • 腹壁の筋群との連続性と関連し、腹筋群を引き上げるのに重要な役割を担っていると思われる
  • 胸腰筋膜の伸張は広背筋、大殿筋、ハムストリングスの作用に影響される

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第3腰椎の高さの体幹後壁の横断面

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  • 胸腰筋膜には浅葉、中葉、深葉があり、腰部では固有背筋の外側で両葉がつながっている
  • 頸部の背面では、胸腰筋膜の浅葉が項筋膜深葉に移行し、頸筋膜の椎前葉と連続している

 

胸腰筋膜の走行

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  • 頸の背面では、胸腰筋膜が項筋膜の深葉と連続している

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  • 胸腰筋膜の深葉は、内腹斜筋と腹横筋の起始となっている

 

胸腰筋膜の三次元的連続性

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下肢との連続性

  • 後葉は胸腰椎と骨盤および下肢の間を結び付け、力を伝達する役割が強調されている
  • 後葉は身体の中でも最も大きな広背筋と大殿筋を結んでいる
  • 胸腰筋膜後葉は大殿筋の起始部となっており、大殿筋は下部腰椎の棘突起から仙骨および尾骨の背面、腸骨稜公園と坐骨結節を結ぶ仙結節靭帯、および後殿筋線より後ろの腸骨外側面を起始としており、大殿筋と中殿筋を覆う深筋膜である殿筋膜と連続する
  • 殿筋膜は下方では大腿の筋群を包む大腿筋膜と連続している
  • さらに大殿筋は、大腿筋膜外側部の肥厚部である腸脛靭帯に付着を持っている
  • 腸脛靭帯は外側筋間中隔を介して、大腿骨の下部と広い範囲で付着を持つとともに、膝関節を超えて脛骨の上端に付着することから、大腿および下腿とも連続性を持つことになる

 

上肢との連続性

  • 胸腰筋膜を起始とする広背筋は、上腕骨の小結節稜に停止を持つことから、後葉は一側の上肢と対側の下肢の動きを調和させる機能を持っている

 

腹部との連続性

  • 中葉は外腹斜筋、腹横筋と内腹斜筋を腰椎横突起に付着させる強靭な構造を持っている
  • 隣り合う腰椎間ではアーチ状を呈している
  • 外腹斜筋、腹横筋および内腹斜筋は側副壁を形成する筋で、これらの筋の停止腱膜は前方では腹直筋を包む腹直筋鞘となり、前腹壁の正中部で左右が結合し、白線を形成している
  • 下端では外腹斜筋腱膜は上前腸骨棘から恥骨結合に張る鼠径靭帯となっている
  • 鼠径靭帯は下方では大腿の筋群を包む大腿筋膜に連続している

 

腰痛との関連

  • Langevinらは、慢性的な腰背部痛を有する患者を超音波で検査し、胸腰筋膜の厚みが優位に増していることを見出した
  • 胸腰筋膜のせん断ひずみが最大20%低下していることを報告している
  • 彼らは、異常な結合組織の構造が腰背部痛の素因を作っているか、あるいは慢性の腰背部痛が原因で起こる運動パターンの変化によって異常な結合組織ができると考えている
  • これらの考えは、様々な障害によって起こる胸腰筋膜の重要な変化は線維化や癒着であり、これが隣接する結合組織の動きを制限し、これに引続いて運動が制限されることによる、という考えに基づいている
  • 線維化が起こる主要な原因は、線維芽細胞の異常な活性化であると考えられている
  • 線維芽細胞は細胞外基質を構成するコラーゲンやエラスチンなどのタンパク質を賛成するだけでなく、ラミ人やフィブイロネクチンなどの細胞接着に関するタンパク質を作り出す
  • 線維芽細胞の働きはこれだけでなく、細胞外基質の線維、すなわちリモデリングにも関与するため、細胞外基質の分解吸収も行う
  • それゆえ、創傷治癒にも関与するし、様々なサイトカインや成長因子を分泌することで炎症や血管新生にも関与する
  • 強い力を伴う反復運動過多は、筋膜を含む運動器系を障害するリスクファクターとなるが、適度な運動や機械的な力はリモデリングを促すことで健康な運動奇形を保つことはよく知られている
  • 軽い刺激は線維芽細胞に働いて抗炎症作用があるが、強い刺激は反対に炎症を引き起こす

 

解剖学を学んでおいた方がよい理由

 

参考文献

腰背部痛における胸腰筋膜の関与 (Journal of Comprehensive Welfare Sciences vol.10 (2019) 由留木裕子ら)