肘部管症候群 尺骨神経の走行・症状・Tinel徴候・肘屈曲テスト・江川徴候
今回は、肘部管症候群について共有していきます。
プロ野球選手では過去に、小谷野選手(日本ハム)が肘部管症候群になっています。
小指の痺れや骨間筋の萎縮の症状がある方は、この記事を参考にして下さい。
肘部管症候群とは
- 肘部管における尺骨神経の絞扼性神経障害を総称して肘部管症候群とよぶ
- 尺骨神経絞扼の原因として、一時的発症の他に変形性肘関節症に伴う骨棘の増殖や、肘関節後内側部の瘢痕形成による神経の滑走障害など二次的原因によるものもある
尺骨神経とは
尺骨神経の走行
- 尺骨神経は、腕神経叢の内側神経束の続きとして腋窩を出て、最初は上腕二頭筋内側校を下行する
- 上腕の中程で、内側上腕筋間中隔を貫き伸側に至る
- その後、内側上腕筋間中隔と上腕三頭筋内側頭の間を通り肘部に至り、上腕骨内側部の内側上顆の後面にある骨性の尺骨神経構を通る
- その後、尺側手根屈筋の両頭間通って前腕の屈側に向かい、同筋の下を手首まで走る
- 手では豆状骨の撓側で屈筋支帯の尺骨神経管を通り、手掌の表面に至り浅枝と運動性の深枝に分かれる
運動枝
- 尺骨手根屈筋
- 深指屈筋
- 短掌筋
- 小指外転筋
- 小指屈筋
- 小指対立筋
- 第3・4虫様筋
- 掌側、背側骨間筋
- 母指内転筋
- 短母指屈筋
知覚枝
- 関節枝(肘関節包、手関節包、中手指節関節包)
- 尺骨神経手背枝
- 尺骨神経掌枝
- 固有掌側指神経
- 総掌側指神経
肘部管症候群の症状
- 小指、薬指(小指側の半分のみ)の痺れと痛み
- 鷲手(骨間筋の障害により、中手指節関節において指が過伸展し、近位・遠位指節間関節においてやや屈曲している)
- フロマン徴候(母指内転筋の麻痺により、母指と示指の間で紙をつまむ場合、長母指屈筋を使わざるをえなくなる)
肘部管症候群の検査法
Tinel徴候
- 肘部管における尺骨神経の走行を確認したら、それに沿って軽く叩打する
- 叩打に伴い、前腕から手部の尺骨神経領域で放散痛、痺れを認めれば陽性である
- Tinel徴候は尺骨神経のみならず、各神経麻痺の回復程度の把握にも利用される重要な所見である
肘屈曲テスト(Elbow flexion test)
- 肘を自動屈曲し、しばらくその肢位を維持させる
- 尺骨神経に対して肘関節屈曲に伴う牽引、オズボーン靭帯などによる圧迫を持続的に加えることで症状を誘発させる
- 屈曲してから30秒以内に尺骨神経領域に痺れ、知覚鈍麻などが生じた場合、陽性となる
江川徴候
- 手掌を開いた状態で机に置き中指を自動伸展させ、その後、中指を示指・環指に接触させるように繰り返し自動運動させる
- 中指先端の自動での運動範囲が4㎝以下、左右比70%以下、他動外転距離が50%以下の場合、陽性となる
- 肘部管症候群などの尺骨神経麻痺があると、手内在筋麻痺が生じているためスムーズに動かすことができない
- 骨間筋の萎縮が生じていない初期の症例でも陽性となりやすく、尺骨神経麻痺の早期発見に有用である
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