肘内側側副靭帯
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『肘内側側副靭帯』について共有していきます。
起始・停止
起始
- 前斜走線維:上腕骨内側上顆腹側
- 後斜走線維:尺骨鉤状突起の内側面
停止
- 前斜走線維:上腕骨内側上顆背側
- 後斜走線維:尺骨肘頭の内側面
特徴
- 肘関節の屈伸運動時において、前斜走線維の長さはほとんど変化せず、常に一定の緊張を保つことを意味し、外反制動の主たる安定化組織とされている
- 肘関節の屈伸運動時において、後斜走線維の長さは2倍程に変化し、屈曲時において最も緊張するため、屈曲位における外反制動組織とされている
- 横走線維は尺骨間をつないでおり、その機能については明らかにされていない
内側側副靭帯の2点間距離
- 前斜走線維(L1)は屈曲角度に関係なく一定の距離を保つ
- 後斜走線維(L5)は屈曲に伴う2点間距離は大きく変化する
- 屈曲に伴う2点間距離の延長が得られなければ、著明な拘縮を呈することになる
野球との接点
投球障害肘
- スポーツによる肘関節障害は内側型、外側型、後方型に分類される
- 投球障害では内側型の頻度が圧倒的に多い
- 投球障害肘の中で内側不安定性を有する症例では、前斜走線維の緩みが問題となる
- 内側型の骨軟骨障害
- 内側上顆骨端線損傷
- 骨端核障害
- 骨棘形成
- 遊離軟骨
- 内側型の軟部組織損傷
- 内側上顆炎
- 回内屈筋群障害
- 内側側副靭帯損傷
- 尺骨神経炎、尺骨神経脱臼
- 肘部管症候群
内側側副靭帯損傷
- 肘関節に強力な外反負荷が加わったときに、その制動組織である内側側副靭帯が断裂する
- 内側側副靭帯損傷が疑われる場合、通常のX線撮影の他に外反ストレス下のX線撮影を行い、両者を比較することで靭帯損傷に対する診断がなされる
- 外反ストレステスト:前腕回内位、肘関節軽度屈曲位で外反負荷を加え痛みがある場合、陽性である
外傷後肘関節伸展拘縮
- 後斜走線維を含めた後内側部の癒着、瘢痕化が原因である場合が多く、この組織の切除により良好な可動域の獲得ができるとの報告が多い