烏口鎖骨靭帯
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『烏口鎖骨靭帯』について共有していきます。
起始・停止
起始
- 菱形靭帯:烏口突起の上内側面
- 円錐靭帯:烏口突起の基部
停止
- 菱形靭帯:鎖骨の菱形靭帯線
- 円錐靭帯:鎖骨の円錐靭帯結節
特徴
- 烏口鎖骨靭帯の機能として、①肩甲骨の吊り下げ、②鎖骨の上昇制御、③棘鎖角の増減制御、がある
- 健常者の棘鎖角は肩関節下垂位で平均56°、150°外転位で平均70°である
烏口鎖骨靭帯の機能解剖
- 烏口突起の先端が下方へ移動(下方回旋)すると菱形靭帯は緊張する
- 烏口突起の基部が下方へ移動(上方回旋)すると円錐靭帯は緊張する
- 両靭帯の合同機能は、肩甲骨のつり下げ機能と鎖骨上昇の抑制機能である
棘鎖角と烏口鎖骨靭帯
- 棘鎖角とは肩甲棘と鎖骨の長軸がなす角を冠状面でみたものである
- 肩関節下垂位で約56°、150°外転位で約70°である
- 棘鎖角は肩関節の屈曲・外転で増加し、伸展・内転で減少する
- 棘鎖角の減少を制限するのが菱形靭帯、増加を制限するのが円錐靭帯である
野球との接点
肩鎖関節脱臼
- 肩鎖関節の完全な脱臼は、烏口鎖骨靭帯の断裂がその本態である
- 肩鎖関節脱臼に対する整形外科的治療は外固定による保存療法のほかに、烏口鎖骨靭帯の修復を目的とした修復術と、別の組織で肩鎖関節の支持性を補う再建術がある
①肩鎖関節の修復術:肩鎖関節を構成する靭帯は縫合し、断裂した靭帯の修復を目指す手術である
- フェミスター変法は断裂した靭帯を縫合後、肩鎖関節をキルシュナー鋼線で固定する
- ボスワース法は螺子を使って鎖骨と烏口突起を固定する方法である
②肩鎖関節の再建術:断裂した靭帯は縫合せず、別の組織を利用して肩鎖関節の安定性を再獲得することを目指す手術である
- デワー法は上腕二頭筋短頭と烏口腕筋をつけたまま烏口突起を切離し、これを鎖骨遠位端へ移行する方法である
- ネビエイザー法は烏口肩峰靭帯を肩鎖靭帯の代わりに移行する手術である