棘上筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『棘上筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
- 肩甲骨の棘上窩
停止
- 上腕骨大結節の上小面
神経支配
- 肩甲上神経神経(C5・C6)
特徴
- 棘上筋は腱板を形成する4つの筋群の1つであり、その中でも機能上最も重要な筋肉である
- 棘上筋と肩甲下筋の間には間隙があり、腱板疎部と呼ばれる
- 棘上筋の上面には肩峰下滑液包があり、棘上筋の滑り機能を円滑化している
作用
筋機能の特徴
- 肩関節外転に作用する
- 上腕骨頭中心からの距離が非常に近いため、外転力としての作用はそれほど強くない
- 下垂位からの外転において骨頭を関節窩に引きつける支点形成力の発揮が重要視されている
- 挙上位における棘上筋は起始と停止が近づくため、有効な支点形成力を発揮することができず、その支点形成機能は他の腱板筋群との協調のもとで作用する
筋連結
肩甲下筋 ↔ 棘上筋 ↔ 棘下筋 ↔ 小円筋
野球との接点
肩峰下インピンジメント症候群
- 野球、水泳、バレーボール等で多い障害の一つである
- 棘上筋は肩峰、烏口肩峰突起の下方を走行するため、外転に伴い衝突や挟み込みといった肩峰下インピンジメント症候群を発症しやすい
- 肩峰下インピンジメント症候群を確認するための代表的な徒手検査として、Neer sign、Hawkins-Kennedy signがある
- Neer sign:肩甲骨を固定し、肩甲骨上方回旋を抑制しながら肩関節を内旋強制位で上肢を前方挙上させる。この時、クリック音や痛みが再現できれば陽性である。
- Hawkins-Kennedy sign:肩甲骨を固定し、肩甲骨の上方回旋を抑制しながら肩関節90°外転外旋位から内旋強制を加える。この時、クリック音や痛みが再現できれば陽性である。
腱板損傷・断裂
- 腱板断裂のほとんどは棘上筋を含んだ形で存在し、完全断裂例の機能の再獲得には手術が必要である
腱板炎・肩峰下滑液包炎
- 重症例では棘上筋の収縮による疼痛が強いため、一見すると腱板断裂例と同様な挙上姿勢を呈する