筋力トレーニングの基礎知識② 神経系の要因 リクルートメント・レートコーディング・シンクロナイゼーション

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『筋トレをしているんだけど、なかなか筋力がついてこない…』

 

『ある程度の筋力はついてきたけど、そこから先が筋力が強くならない…』

 

ってことありませんか?

 

そこで、今回は筋力をつけるためのヒントを紹介していきます! 

 

 

 

 

 

 

 

 

筋力を決定する要因

 

筋力を決定する要素には以下の6つがあります。

 

  1. 筋断面積
  2. 神経系の要因
  3. 筋繊維の組成
  4. 筋繊維の解剖学的な要因
  5. 関節の角度
  6. 心理的な要因

 

今回は、「2.神経系の要因」について解説していきます。

 

 

 

筋力と神経系の要因の関係

 

筋力トレーニングをするとなぜ筋力が強くなるのか?

 

それには、神経系筋肥大の二つが関係しています。 

 

 

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引用:http://www.ipec-pub.co.jp/ipec/pdf/spts-rin-sample.pdf#page=23

 

 

 

 筋力トレーニングを始めてから、筋力が強くなるまでを時系列で表すと…

 

 

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引用:https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DB00011372.pdf#page=1

 

 

 

トレーニングを開始して20週目までに神経系の要因により、

さらに、10週目以降筋肥大の要因も加わり、筋力が強くなります。

 

神経系の要因は20週目以降では頭打ちになりますが、逆に言えば、

何かしらトレーニングをすれば20週目までは必ず筋力は強くなる、

ということですね。

 

それ以降で筋力を強くできるかどうかは、どれだけ筋肥大を起こせるか

にかかっているということですね。

 

では、神経系の要因とは具体的にどういうことでしょうか?

 

 

 

リクルートメント

 

リクルートメントについて解説していきます。

 

リクルートメントとは、

動員する運動単位の種類と総数による調節のことです。

 

まずは、言葉の説明から。

 

運動単位とは、

1個の運動ニューロンとそれに支配される筋繊維群

ことです。

 

1個の運動ニューロンが支配する筋繊維は約20~1000本といわれています。

 

手など滑らかな動きが要求される筋肉は支配される神経の数が多くなります。

 

下肢・体幹など力強さを要求される筋肉は支配される神経の数が少ないです。

 

 

 

神経支配比
筋繊維数 運動単位数 運動単位当り筋繊維数
広頚筋 27,100 1,096 25
第一背側骨間筋 40,500 119 340
第一虫様筋 10,038 93 108
前脛骨筋 250,200 445 562
腓腹筋(内側) 11,200,000 579 19343
(Goodgold J et al,1977)
 
 
 
 
 この運動単位がどれぐらい動員されているかで筋力が
変わってくるということです。
 
 

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引用: https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DB00011372.pdf#page=1

 

 

 

 また、運動単位にはいくつかの種類があります。

 

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    引用:http://www.ipec-pub.co.jp/ipec/pdf/spts-rin-sample.pdf#page=4
 
 
①S型(Slow twitch)
②FOG型(Fast twitch Oxidative Glycolytic fiber)
③FG型(Fast twitch Glycolytic fiber)
 
 
 
※それぞれの特徴については、以下を参照してください
⇩⇩⇩

sakuraiku.hatenablog.com

 

 

 

つまり、筋収縮を繰り返すことで、動員される運動単位の総数が増え、
さらに、筋収縮のスピードや収縮時間を変えることで
それぞれの種類の単位が賦活され、結果的に筋力が強くなるということですね。
 
 

レートコーディング

レートコーディングとは、α運動神経発火頻度による調節
ことです。
 
運動神経が発火し、活動電位により起こる1回だ化粧汁速い経過の筋収縮を、
単収縮(twitch)といいます。
 
中枢神経から筋肉への信号は脊髄前角の運動ニューロンの発火頻度で調整されます。
 
発火の頻度が多くなり、単収縮が加重、融合して生じる大きな張力を強縮
いいます。
 
遅筋では、発火頻度が多くなると、加重による融合が生じます。
 
速筋では、発火頻度が多少多くなっても加重は生じません。
 
しかし、より高い頻度で続けて発火すると疲労(張力の低下)が生じます。 
 
 
 
 
 つまり、発火頻度が高くなればなるほど筋力は強くなる
いうことですね!
 
しかし、上の図から分かるように筋力は一定の水準よりも強くなることはありません。
 
  

シンクロナイゼーション

シンクロナイゼーションとは、運動単位の活動時相による調整
ことです。
 
簡単に言うと、1つの筋肉にあるすべての運動単位が
どの瞬間に活動しているか、ということです。
 
例えば、10個ある運動単位がバラバラのタイミングで活動すると…
滑らかな動きや力の弱い動きになります(非同期)。
 
逆に、10個ある運動単位が全て同時のタイミングで活動すると…
瞬間的な力強い動きになります(同期)。
  
 

まとめ

筋力が強くなるには『神経系』、『筋肥大』の2つが関係している。
 
トレーニングを開始して20週目までは神経系の要因により筋力が強くなる。
 
筋収縮を繰り返すこと、収縮スピードや収縮時間を変えることで運動単位の総数や
 種類が増え、筋力が強くなる。
 
運動神経の発火頻度が多くなればなるほど筋力も強くなる。
 
運動単位が全て同時に活動することで強い力が、バラバラに活動することで滑らかな
 動きになる。
 
 

参考文献

筋力トレーニングの基礎知識 -筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズム-
(京都大学医療技術短期大学紀要別冊 健康人間学 第9号 市橋則明)
 
筋力トレーニングについて
(運動生理 1994 9:131‐138 幸田利敬)
 
トレーニングと筋の肥大を考えよう
(体育学研究室 松永智)