コーチングとは? グッドプレーヤーを育てる・自己決定を促す・モチベーションの向上・行動制御

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コーチングとは?

1.コーチングとコーチを定義する

  • ビジネスにおけるコーチングは、部下が自ら答えを導き出したり、課題解決の方法を見出していくのを支援する方法論、つまりコミュニケーションのスキルとして用いている

 

  • スポーツの立場から考えれば、コーチングは単にプレーヤーとのコミュニケーションスキルにとどまるのではなく、プレーヤーやその関係者をも巻き込む、さまざまなプロセスの総称ということのほうが適している

 

  • 競技者やチームを育成し、目標達成のために最大限のサポートをすることが指導者の役割であり、このようなサポート活動全体がコーチングであるとしている

 

 

2.グッドプレーヤーを育てる

  • コーチングの目的は、プレーヤーの有能さや人間性を高めていく取り組みを通して、プレーヤーの目標達成を支援していくことにある

 

  • では、プレーヤーはどのようなプレーヤーを目指すべきなのだろうか

 

 

グッドプレーヤー像

 

  1. スポーツを愛し、その意義と価値を自覚し、尊重できる人

 

  1. フェアプレーを誇りとし、自らの心に恥じない態度をとり行動できる人

 

  1. 何事に対しても、自ら考え、工夫し、行動できる人

 

  1. いかなる状況においても、前向きかつ直向きに取り組むことができる人

 

  1. 社会の一員であることを自覚し、模範となる態度・行動がとれる人

 

  1. 優しさと思いやりを持ち、差別や偏見を持たない人

 

  1. 自分を支えるすべての人々を尊重し、感謝・信頼できる人

 

  1. 仲間を信じ、励まし合い、高め合うために協力・協働・協調できる人

 

 

3.グッドコーチになる

  • 私たちがどのようなコーチがどのようなコーチになりたいのか、あるいはどのようなコーチになろうと努力をしていくのかという方向性を明確に持っていることが重要である

 

  • グッドコーチ像には、『常に自分を振り返りながら学び続けることができる』、『プレーヤーとともに成長することができる』という人物像があるように、成長の仕方を自ら探求し、自分自身の成長に主体的に取り組んでいくことができる人物が、プレーヤーに成長の仕方を伝えることができるようになる

 

 

グッドコーチ像

 

  1. スポーツを愛し、その意義と価値を自覚し、尊重できる人

 

  1. グッドプレーヤーを育成することを通して、豊かなスポーツ文化の創造やスポーツの社会的価値を高めることができる人

 

  1. プレーヤーの自立やパフォーマンスの向上を支援するために、常に自分を振り返りながら学び続けることができる人

 

  1. いかなる状況においても、前向きかつ直向きに取り組みながら、プレーヤーとともに成長することができる人

 

  1. プレーヤーの生涯を通じた人間的成長を長期的視点で支援することができる人

 

  1. いかなる暴力やハラスメントも行使・容認せず、プレーヤーの権利や尊厳、人格を尊重し、公平に接することができる人

 

  1. プレーヤーが、社旗の一員であることを自覚し、模範となる態度・行動をとれるように導くことができる人

 

  1. プレーヤーやプレーヤーを支援する関係者が、お互いに感謝・信頼し合い、かつ協力・協働・協調できる環境をつくることができる人

 

 

4.自己決定した行動こそパフォーマンスは伸びやすい

  • コーチングの目的はプレーヤーの有能さを向上させていくことの支援、および人間的成長の支援にある

 

  • いずれの場合にも、コーチが直接的に有能さを向上させたり、人間的な成長をさせることは不可能である

 

  • 両者ともにプレーヤー本人が自らを成長させていない限り、実現不可能である

 

  • 自ら進んでやるか強制的にやらされているのかに関わらず、プレーヤー本人が体力を向上させるためのトレーニングに取り組まない限り、その効果は得られない

 

  • プレーヤー自らが主体的に取り組めるような環境をコーチが提供することが重要になってくる

 

 

モチベーションの向上
  • より上達が期待できる内発的動機に近い、より内在化したモチベーションで練習に取り組めるようなコーチングを心がけることが重要である

 

  • 具体的にはどのような行動をとるかを考えると、『アメとムチを使い分ける』ことが重要だという回答を聞くことが少なくない

 

  • モチベーションの側面からこの表現を分析してみる

 

  • アメはご褒美、ムチは罰を意味している

 

  • つまり、両方とも外発的動機によってプレーヤーを制御するということだ

 

  • その発想の根底には、人間は外部からの刺激によってしか行動を起こすことができないという考え方が透けて見える

 

  • しかし、外発的動機が全て悪いと言っているわけではなく、できることなら内発的動機による行動を導くようなコーチングが求められるということだ

 

  • 時と場合によっては外発的動機による行動も必要とされる場合はある

 

  • トップレベルの選手が、周りからの期待に応えたいという思いで厳しい練習をこなして優れた成績を残したり、賞金によって生活を豊かにするために頑張ったり、ということはある

 

  • もっとも、この例のどちらの場合も、外発的動機と内発的動機が混在している状態ではある

 

 

5.コーチの行動制御がプレーヤーの成長を妨げる

  • アメとムチを使うと考えているコーチは本当にプレーヤーが内在化した、自己決定したモチベーションでプレーしているのかをよく考えてみる必要がある

 

  • 大好きだったスポーツをやらされている状態にしてしまうのは、コーチングの失敗といえるかもしれない

 

  • できることならこのような状況に追い込むようなコーチングは避けたいものである

 

  • 避けるべきコーチング行動として参考となるものを紹介する

 

  • 次に挙げたのは、プレーヤーを制御する行動として報告されているものである

 

  1. 有形の報酬
  2. 制御的なフィードバック
  3. 過度な個人制御
  4. 脅迫的なふるまい
  5. 自我関与の促進
  6. 条件付きの関心

 

 

1.有形の報酬

制御戦略

  • タスク関与
  • タスク完了
  • パフォーマンス
  • 競争

 

 

説明

  • 有形の報酬をプレーヤーのふるまいを操作するために用い、コーチが望むふるまいにさせようとすること

 

 

2.制御的なフィードバック

制御戦略

  • 指示
  • 批判
  • 賞賛

 

 

説明

  • プレーヤーのふるまいについてどのような期待をしているかを伝える指示的フォードバック
  • プレーヤーがよりよいパフォーマンスを発揮するように動機づけようとして、プレーヤーを怒らせようとする過度に批判的なフィードバックを用いる
  • コーチが期待するプレーヤーの行動を引き出すために賞賛する

 

 

3.過度な個人制御

制御戦略

  • 価値観/意見の押し付け
  • 制御的な発言内容や言い方監視
  • 目標の押しつけ
  • 押しつけがましいふるまい

 

 

説明

  • プレーや自身の見解を無視し、コーチの意見をプレーヤーに押しつけるふるまいをする
  • コーチ中心のやり方にプレーヤーが確実に従うように、制限的な表現方法や圧迫的な話し方をする
  • トレーニング中に過度な監視をする
  • コーチによって設定された目標をプレーヤーに押しつけようとする
  • スポーツ参加に直接関係のないプレーヤーの生活の側面に影響を与えようとする

 

 

4.脅迫的なふるまい

制御戦略

  • 言葉によるいじめ
  • 怒鳴る
  • 体罰
  • 個人攻撃
  • 屈辱する・罵る

 

 

説明

  • プレーヤーにコーチの期待や要求を遵守させるために強引な手法を用いる

 

 

5.自我関与の促進

制御戦略

  • 競争
  • 公開評価
  • 基準比較
  • 成功を評価する外的指標

 

 

説明

  • プレーヤーが他のプレーヤーよりも自分が優れていることを示すことによって自尊心を得ていくような戦略をとること

 

 

6.条件付きの関心

制御戦略

  • 肯定的関心
  • 否定的関心
  • 否定的感情を伝える表現

 

 

説明

  • プレーヤーが特定のふるまいや特質を示した時に関心や愛情、支援を提供し(肯定的関心)、特定のふるまいが見えないときには監視や愛情、支援を差し控える(否定的関心)
  • 失望していることを示し、精神的苦痛に訴えかけ、罪悪感を誘発するような苦言をする

 

 

肘下がり 定義と原因・改善方法

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肘下がりとは?

 

肘下がりとは、字のごとく投げる時に肘が下がってしまうことを言います。

 

 

どこの位置に対して肘が下がっているのでしょうか?

 

SSE(Shoulder - Shoulder - Elbow)ライン両肩と肘を結んだラインに対して、肘が下がってしまいます。

 

 

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画像引用:「肘を上げろ」とは?菅野智之のフォームから学ぶ、肘の高さの2つの基準 | VICTORY

 

 

では、肘が下がると何が良くないのでしょうか?

 

 

 

肘が上がる(SSEラインが揃う)ことによる2つのメリット

1.強い球が投げられるようになる、球速が上がる

 

ひとつ目のメリットとして、強い球が投げられるようになる球速が上がることが考えられます。

 

その理由として、ピッチングは全身を使った回転運動であることがポイントになります。

 

 

 

 

 

脚を踏み出し、横移動するエネルギーを股関節から体幹へ回転するエネルギーに変換し、そのエネルギーをいかにボールに伝えられるかが重要になります。

 

体幹の回転エネルギーをボールに伝える時、上肢の真ん中にある肘が曲がってしまうとエネルギーが効率よく伝達されなくなってしまいますよね。

 

 

SSEラインが揃うことで、エネルギーをしっかりとボールに伝達することができ、力強い球や速い球を投げられるようになります。

 

 

 

2.怪我の予防になる

 

ふたつ目のメリットとして、怪我の予防につながります。

 

 

SSEラインが揃うことで、肩関節はゼロポジションになります。

(※ゼロポジションの詳細については別の機会に解説していきます。)

 

ゼロポジションになると、肩関節のインナーマッスルを偏りなく均等に使うことができます。

 

 

それにより、局所の筋肉に負担をかけすぎないことで怪我のリスクを減らすことができます。

 

 

 

プロ野球選手の肘の位置

 

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画像引用:菅野智之 - Wikipedia

 

 

 

f:id:sakuraiku:20211103070229p:plain画像引用:“黄金ルーキー”奥川恭伸がシーズン最終戦で一軍デビュー。2回5失点9安打とプロの洗礼を浴びる | THE DIGEST

 

 

 

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画像引用:<ロ・西>初回、マウンドに上がった佐々木朗 ― スポニチ Sponichi Annex 野球

 

 

 

一流選手はSSEラインの形がとても綺麗ですね!

 

それでいて、上肢の力感がまったくなく、全身を使って投げている感じがわかります!

 

 

少し話が脱線しますが、SSEラインが揃うことはもちろん、その角度は選手によって違いがあると思います。

 

角度が大きくなり、より高い位置でリリースできることで球速が上がる可能性が考えられます。

位置エネルギーが高いほうが、ボールに伝達できるエネルギーも高くなりますからね。

 

 

 

肘下がりの原因

1.コッキングからトップポジションの動きで腕を下げ過ぎている

 

アーリーコッキングからレイトコッキングで腕を下げ過ぎてしまうとトップポジションで肘が下がってしまいます。

 

野球をやり始めた選手やまだ筋肉がしっかりしていない小学校低学年に多い印象です。

 

コッキングでの腕の軌道を確認しながら修正していくことで治る場合もあると思います。

野球をやり始めたタイミングで肘下がりを治しておかないと、その癖が染みついてしまい、修正するのが大変になるため早めに対処しましょう。

 

 

2.胸を張る動きが少ない

 

トップポジションで胸を張れていないと肘が下がりやすくなります!

 

動画のトップポジションをみるとわかりますが、全員の選手が胸が張れています!

 

胸が張れるているということは、専門的にみると胸椎が伸展しています。

 

胸椎が伸展していると、僧帽筋など背筋群に力が入っていることになります。

 

僧帽筋など背筋群に力が入ると、肩甲骨は上方回旋しやすくなります。

 

それにより、肘は自然と高い位置になります!

 

 

 

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3.股関節や体幹の回転の動きが使えていない

 

股関節と体幹の回転の動きが使えていないと肘が下がります!

 

ピッチングの原理は、並進運動を回転運動に転換する動作です。

 

回転する身体の部位は、股関節・体幹・肩関節があります!

 

この3つの回転部分がどのような割合で回転しているかによります。

 

100㎞/hのボールを投げる選手でも、体幹の回転の割合が大きいのか、肩の回転の割合が大きいのかは選手にって異なります。

 

もし、股関節・体幹の回転が少ない場合、肩関節の回転を優位に使うようになります。

 

肩関節の回転は、専門的にいうと内旋運動になります。

 

内旋運動を強調したい場合、肘を軽く曲げて下げます

 

そうすると、肘を支点にして肩内旋運動が容易にできるようになるからです。

 

 

ある程度の球速であれば、肩の内旋運動で対応できますが、さらに速い球速を目指す場合、内旋運動だけでは限界があります。

 

肩の筋肉は体幹・股関節の筋肉と比べると小さく、パワーが弱いです。

 

体幹・股関節のパワーの強い筋肉を使った方が球速は上がります。

 

 

※筋肉のパワーや体積ランキングについて復習したい方はコチラ⇩

sakuraiku.hatenablog.com

 

 

 

回転のイメージとして、でんでん太鼓を思い浮かべてください。

 

柄(体幹)が回ると、ひも(腕)が勝手に回ります!

 

 

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柄(背骨)の回転がゆっくりだと、遠心力が少なく、ひも(腕)の位置が低くなります。

 

 

 

肘下がりの改善方法

1.ブリッジ(胸椎伸展)

 

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2.体幹回旋 (腕は脱力して)

 

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3.スローイング練習

 

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発育発達期の心理的特徴 幼児期・児童期・青年期・自信を育てる・才能の発達と指導・適切な褒め方と叱り方

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発育発達期の心理的特徴

1.心理的特徴

(1)幼児期の特徴
  • 好奇心旺盛な時期であると同時に自我が芽生え発達する時期である

 

  • 幼児期の思考は他人の視点に立って対象を客観的にとらえることができず、自己中心性に基づいていることが特徴である

 

  • 幼児は仲間との遊びやケンカといった相互作用をとおして社会性を身に着けていく

 

 

(2)児童期の特徴
  • 児童期は平穏な成長を遂げる時期であり、論理的思考が発達し、道徳意義に目覚める時期である

 

  • この時期に獲得される重要な知的技能の1つに、読み書きができる能力がある

 

  • 様々な情報に接し、子供の知識はより広く、深くなっていく

 

  • 家庭でのタテの人間関係から、学校という新しい社会の中でヨコの人間関係が中心となっていく

 

 

(3)青年期の特徴
  • 青年期とは子供から大人への過渡期である

 

  • 身体的な発達に変化があり、こうした体への関心をきっかけに、自己の内面への関心も高まり、内省的な傾向が強まる

 

 

2.心理的側面に配慮した指導

(1)子供の自信を育てる
  • 自信に近い概念を心理学では『自己効力感』と呼んでいる

 

  • 自己効力感とは、ある具体的な状況において目標とする課題に対する「できる」という見込み感のことである

 

  • 自己効力感が高まることで課題の達成が実現しやすくなり、そして、成功体験を伴ってさらに高い目標へと挑戦しようとする感情が高まる

 

  • バンデューラは自己効力感を生み出す要素について、以下の4つをあげている

 

  1. 達成体験:自分で実際にやってみて、直接体験してみること
  2. 代理体験:他人の成功や失敗の様子を観察することによって、大理性の経験をもつこと
  3. 言語的説得:自分にはやればできる能力があるのだということを他者から言葉で説得されたり、またはその他の方法で社会的な影響を受けること
  4. 情動的喚起:自分自身の有能さや、調書・欠点などを判断していくためのよりどころとなるような、生理的変化の体験を自覚すること

 

 

  • 簡単にまとめると、自己効力感を生み出すためには、

①自分で実際に体験し、

②他者の成功・失敗の様子を観察し自分に置き換え、

③自分にはできる能力があることを他者に説得されながら、

④苦手だと感じていた場面でも上手くできたことを実感すること

                               と言える

 

  • ここで興味深いことは、自信を生み出すためには自分自身のみでそれを作り出すのではなく、他人の行動から学んだり他者の言葉から影響を受けたりしながら、最終的に自分の肯定的な変化に気づき、自己効力感が形成されることである

 

 

(2)才能の発達と指導
  • 近年の研究から才能は発達することがわかってきた

 

  • 例えば、テニスではどのようにして選手の才能を発達・開花させるかを組織的かつ科学的に進め、世界レベルの選手を育てるために必要な3段階の育成方針となる要素が明確に定義されている

 

 

〇第1段階 “導入/基礎の段階”

  • 第1段階では、ゲームに対する愛着を持ったりゲームを楽しんだりすることが特徴だが、選手の発達に極めて重要な目標を『基礎の習得』に置いている

 

  • それはコンスタントにショットを打ったり、相手のボールを返球したりできなければ、ゲームを楽しんだり、好きになったりできないからである

 

  • そして、発達の初期段階であっても技術面だけでなく、心理面にも習得させるべき課題が明確に示されている

 

  • それが「自己肯定感」である

 

  • この感情は自分に対する肯定的な評価であり、「僕はできる」といった気持ちのことである

 

  • この感情が高まらなければ、次の段階でやる気の低下、不安の増大、自身の喪失などに結び付いてしまう

 

 

 

〇第2段階 “洗練/移行の段階”

  • 第2段階では、基礎に磨きをかけ、専門的な技術を習得し、ポジティブで優れた選手になるためには何をすべきかを学ぶ

 

  • そのためには正しい目標設定が不可欠だが、それは単なる夢や希望ではなく、「より具体的で挑戦できる目標」であることが重要である

 

  • さらに、激しい練習や試合から生じるプレッシャーにうまく対処できるようストレスマネジメントや集中力を高めるスキルを身につける必要性が強調されている

 

 

 

〇第3段階 “世界クラスのパフォーマンスの段階”

  • 第3段階では、ハイレベルな大会に出場する一方で、より専門的な技能の獲得や人格形成に多くの時間が費やされる

 

  • この段階になるとパフォーマンスの向上は緩やかになるため、選手は絶えず自分自身にやる気を持たせ、それを維持する方法を見出さなくてはならなくなる

 

  • そして、コート内外で気を散らすものへの対処や注意が途切れないようにする自己調整スキルの向上が求められる

 

  • この段階でもコーチの存在は必要だが、選手は自分自身で意思決定し、これからますます複雑化する物理的・社会的環境をマネジメントできる能力を開発しなければならない

 

 

(3)適切なほめ方、𠮟り方

「ほめ育てる」指導の誤解

  • 日本の子供や若者は自己肯定感が低いため、もっとほめて自信をつけさせないといけない

 

  • このような声が1990年代に教育界にも親の間にも広まった

 

  • しかし、そのような考え方が広まり、むしろ傷つきやすくてキレやすい若者、すぐに落ち込む若者が増えていることが指摘されている

 

  • 人生は思い通りにならないことの連続なのだから、逆境に負けない力、落ち込むようなことがあってもすぐに立ち直る力を高めることの重要性が強調されている

 

  • それを高めるためには、適度な挫折を繰り返し経験することが必要で、そうした負荷がかかることで、心が鍛えられていく

 

 

能力ではなく努力をほめる

  • ほめることは重要だが、その使い方を間違えるとかえってマイナスを与えることがある

 

  • 例えば、

①易しすぎる課題ができたことをほめられる、

②明確な根拠なしにほめられる、

③過剰で大げさにほめられる、

④相手に都合がよくなるようにほめられる、

  このような場合にはほめられることで逆にやる気を低下させることが教育心理学の研究から証明されている

 

  • 「頭の良さ=能力」をほめると、自分の能力の高さに対する期待を裏切りたくないという思いに縛られ、失敗を恐れて難しいことにチャレンジしにくくなる

 

  • それに対して、「頑張り=努力」をほめると、努力する人間であるという期待を裏切りたくないという思いに駆られ、チャレンジしがいのある難しい課題に取り組もうとするモチベーションが湧いてくるわけだ

 

 

人間性でなく行動を叱る

  • 次に、叱り方のポイントは、「人間性を叱らず、行動を叱る」ことにある

 

  • 例えば、危険なラフプレイがあったとする、この行為は反則行為であるため指導者はしっかりと叱る必要がある

 

  • けれど、行為の所在を個人の人間性や人格と結び付けることは避けるべきだ

 

  • なぜなら、人間性や人格はすぐに変わることができないため、素直に受容できないからだ

 

  • そこで、変化しやすい行動に着目して叱ることがポイントである

 

  • 行動自体を叱り、同時に今後取るべき適正な行為を明確にさせる必要がある

 

  • そして、行動を叱る背景には、選手に対する普遍的な信頼感が根本にあることが肝心なのだ

 

  • これによって、誤った行動を変えていこうとする気持ちが強化されていく

 

 

 

 

7歳までにできるようになりたい84の基礎的運動パターン 姿勢制御運動・移動運動・操作運動

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心理学的にみた運動発達

  • 幼児期、自動機の運動コントロール能力の発達は、『基礎的運動パターン』の習得というかたちであらわされる

 

  • 基礎的運動パターンとは、人間の運動に共通してみられる時間的、空間的に組織化された運動様式を意味する

 

  • たとえば、『走る』という基礎的運動パターンは、短距離走、走り高跳びの助走、テニスのフットワークなど、それぞれのスポーツに応じて特殊化されているが、走るという運動パターンとしては共通である

 

  • 人間は80を超える基礎的運動パターンを持つが、6~7歳頃までにすべての基礎的運動パターンを習得する

 

  • すなわち、基礎的運動パターンの種類と数(量的)という点では、児童期の初期にずでに大人と同じになるのである

 

  • この時期の運動発達にとって非常に重要なのが経験する『運動の多様性』である

 

  • 同じ動きを繰り返すより、いろいろ変化をつけた動きを経験する方が学習効果は高くなる

 

  • この現象は多様性練習効果と呼ばれている

 

  • 発達初期における豊富で多様な刺激や経験の重要性は、運動発達だけでなく、知覚や知的な発達についても指摘されている共通の原則である

 

  • 子供の運動指導において留意することは、『子供は決して能力の低い小さな大人ではない』ということである

 

  • 子供と大人は、できる運動自体はあまり変わらないが、その質的な部分に大きな違いがある

 

  • そのため、単に大人が行っている運動を、小型化する、軽量化する、距離を短くするなどして行わせる指導では、発達に応じた指導にはならない

 

  • 幼児期から児童期前半までは、子供たちが自発的な興味や関心に基づいて自分の頭で工夫して様々な運動をしたくなるような環境を整えるという間接的な遊びによる指導が中心となろう

 

  • 心理学では、『遊び』とは内発的に動機づけられた活動と捉えている

 

  • 内発的動機づけとは、活動に内在するその活動独自の魅力に引き付けられてプレーしている状態をいう

 

  • 具体的にいえば、ドッジボールには他の運動では代えられないドッジボールをプレーすることによってのみ味わえる楽しさがある

 

  • そのような、それぞれの運動の持つ独自の楽しさを追及している状態が遊びであるといえる

 

  • 運動には内発的動機が満足される楽しさと、外発的動機が満足される楽しさがあるが、遊びとして運動を指導する場合は内発的動機が満足される楽しさを十分に味わえるようにすることが肝要である

 

 

 

基礎的運動パターン

  • 基礎的運動パターンとは、人間の運動に共通してみられる時間的、空間的に組織化された運動様式を意味する

 

  • たとえば、『走る』という基礎的運動パターンは、短距離走、走り高跳びの助走、テニスのフットワークなど、それぞれのスポーツに応じて特殊化されているが、走るという運動パターンとしては共通である

 

  • 人間は80を超える基礎的運動パターンを持つが、6~7歳頃までにすべての基礎的運動パターンを習得する

 

 

3種類の基礎的運動パターン

  • 基礎的運動パターンは以下の3種類に分類される

 

  1. 姿勢制御運動
  2. 移動運動
  3. 操作運動

 

  • 今回は、全84個の運動パターンのうち、42個を紹介していく

 

 

姿勢制御運動
  1. 立つ
  2. 寝る
  3. 回る
  4. 転がる
  5. 乗る
  6. ぶら下がる
  7. からだを振る
  8. バランスをとる
  9. かわす
  10. 逆立ちする
  11. 踏む

 

 

移動運動
  1. 歩く
  2. 走る
  3. 跳ぶ
  4. 這う
  5. 滑る
  6. 登る
  7. 降りる
  8. 入る
  9. スキップする
  10. 運ぶ
  11. くぐる
  12. 渡る
  13. 寝転ぶ

 

 

操作運動
  1. 打つ
  2. 蹴る
  3. 叩く
  4. 投げる
  5. 受ける
  6. 回す
  7. 振る
  8. 引く
  9. 押す
  10. 持ち上げる
  11. 負う、おさぶる
  12. 突く
  13. 縛る
  14. 支える
  15. 掘る
  16. 積む
  17. 倒す
  18. 漕ぐ

 

 

 

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 画像引用:公認スタートコーチ(スポーツ少年団) 専門科目テキスト  

 

 

発育発達期の身体的特徴 身長・骨格・体重・スキャモンの発育曲線・神経系・筋コントロール・エネルギー代謝量・最大酸素摂取量

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発育発達期の身体的特徴

1.身長の発育

  • 発育とは、身長や体重、姿勢などの身体の形態的な変化を指す

 

  • 身長の発育速度は、生まれてから成人(発育速度が1㎝/年 以下)になるまで、2回の急進期がある

 

  • 第1の発育急進期は誕生から乳幼児までで、第2は小学校高学年から中学校期の第2次性徴期にみられる

 

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画像引用:公認スタートコーチ(スポーツ少年団) 専門科目テキスト 

 

 

  • この第2の急進期は、身長発育速度ピーク年齢(PHV年齢)と呼ばれ、その量は年間平均で男子約7.4㎝、女子約6.7㎝となる

 

  • 子の発育のスパートは、その後の成人期の伸張と高い相関があるが、その量や時期を捉えることは成長以上の早期発見につなげることもできる

 

  • スポーツ指導者として注意すべきは、PHV年齢に性差がみられることの理解で、男子が11~13歳時、女子が9~11歳時であり、女子の方が男子よりも約2年早く発現する

 

  • 近年の栄養を含む生活環境の変化から、男女ともにより早く成熟し、PHV年齢が早くなる傾向にあると指摘されている

 

  • ただ、この発現年齢や量に個人差が大きいことも留意しなくてはならない

 

 

2.骨格の発育

  • 骨格はジュニア期において急激に発育する

 

  • 手根骨のX線写真による化骨状況から推定する生物学的な骨年齢は、同じ暦年齢でも男女とも3~4年の差が生じる

 

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画像引用:公認スタートコーチ(スポーツ少年団) 専門科目テキスト 

 

 

  • 骨の成長には、栄養状況や睡眠を含む生活様式のほか、運動による骨への刺激が大きく関わる

 

  • 適切な運動は、特に横軸方向への骨の発育に影響し、骨膜下膜性骨化によりその厚みを増加させる効果がある

 

  • 言い換えれば、この期の運動の量や質が不足することは、加齢による長軸方向への発育に留まり細長い長管骨となることで、骨折のリスクを高める可能性がある

 

  • 骨格の発育には、運動による刺激は必要な要因となるが、一方でそれが過度になるもしくは偏ることは障害の危険度を高める

 

  • 特に身長が急激に伸びる第2次成長期の骨端部には、成長軟骨層という比較的弱い部分があり、連続する高強度運動による刺激が加わることで様々な障害を誘発することを留意しなくてはならない 

 

 

3.体重の発育

  • 体重は、身長や胸囲とあわせて体格を構成し、骨格、筋肉、脂肪、内臓、血液、水分などの重量を捉え、それらの総合的な評価として用いられる

 

  • 体重の発育は、身長に類似したパターンを示す

 

  • 男子はPHV年齢に一致し急激に発育するが、女子ではPHV年齢より約1年遅れ、比較的緩やかに発育する傾向がある

 

  • それぞれのピーク期の発育量は、年間平均で男子約5.7㎏、女子約4.9㎏となる

 

  • 体重の変化には筋肉や骨の発育量が関わり、それらに対しホルモンの働きが大きな影響を及ぼす

 

  • ホルモンは主に内分泌腺で作られ、血液などの体液を介して作用する液性の情報伝達物質である

 

  • 筋や骨の発育や発達には、下垂体前葉からの成長ホルモンに加えて、生ホルモンの分泌が重要とされ、10歳くらいまでは男女とも同程度分泌される

 

  • また、男性ホルモン(アンドロゲン)は、タンパク質同化作用があり、骨や骨格筋の成長を促進する

 

  • これらは筋肉質な身体を形成するだけでなくパフォーマンス向上にも期待できる

 

  • 一方、近年成長過程にある子供において、肥満による健康障害が増加しており、それを知る手立ての切り口として適切な肥満度の判定が求められる

 

 

4.スキャモンの発育曲線

  • 発育は、身体の形態的な変化を指す

 

  • 発達は、筋力や巧緻性などの身体の機能的な変化を指す

 

  • ジュニア期における身体や諸機能の発育と発達は、一様でないことが明らかとなっている

 

  • スキャモンは、主要な臓器や機関の重量を成人レベルの増加量に対する割合として経年変化を示した

 

  • 発達の様式やタイミングはそれぞれ異なり、それらは4パターンに分類される

 

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画像引用:公認スタートコーチ(スポーツ少年団) 専門科目テキスト 

 

 

  • 一般形には、身長などの体格、呼吸器などの臓器、筋肉、血液量などがあり、生後および中学校において顕著に増加する

 

  • リンパ系型は、胸腺、リンパ腺などがあり、11歳時に成人の2倍近くとなり感染症への免疫力を高めることに繋がる

 

  • 生殖型は、精巣や前立腺(男子)、卵巣や子宮(女子)などがあり、第2次性成長期以降に成人レベルまでに増加する

 

  • 神経型は、脳、脊髄、眼球、頭部の上部などが含まれ、7歳までに成人の90%までに達する 

 

 

5.神経系の発達

  • ヒトはほとんど動けない状態で誕生し、歩き始めるまで姿勢や移動に関わる発達が急速におこる

 

  • これは生後1~2年で顕著にみられ、スキャモンの発育曲線の神経型が示すように、神経系機能の急激な発達が要因としてあげられる

 

  • 神経系の機能は、他の機能に比べて先んじて発達し、10歳時には成人レベルに近似することから、乳幼児期からの発達の特徴を理解することは、動きの獲得と習熟を考えるうえで重要となる

 

  • 動きを形成する筋肉には神経が繋がっており、脳、脊髄などからの命令を神経線維にて伝えることで動きを発生し調整する

 

  • 発育期、特に幼少年期の脳内の神経は、あらゆる刺激に対し随時適応的に変化し発達する

 

  • この時期は、神経細胞や回路は過剰に作られる(神経過増殖)が、一時的であり、次第に合理的効率的な神経カロへと整えられ、余分な神経細胞や神経線維は退化し消失する

 

  • 神経細胞の刺激による神経の過増殖と消失は、中枢神経系の一般的な発達の特徴であり、神経回路(シナプス活動)は、使われれば強化され、使わなければ退化が生じると言える

 

  • ジュニア期は神経回路の形成が盛んであり、特に能動的に自ら発した運動が刺激となり感覚系のフィードバックを通して運動回路の強化がより促される

 

 

6.神経・筋コントロール

  • 運動やスポーツにおける高度な動作や身のこなしは、乳幼児からの間隔の発達や神経・筋コントロールの向上が深く関わる

 

  • 感覚には視覚、聴覚、味覚、嗅覚、皮膚感覚といった五感の他に、姿勢や身体の移動に関わる深部感覚(位置感覚、運動感覚、振動感覚、重量感覚など)があり、運動に直接的・間接的に関わる重要な機能であり、10歳までに急速に発達する

 

  • 多くの運動やスポーツで重要となる反応時間は、6歳から12歳にかけて短縮する

 

  • ボールなどの重さを感じ取る重要弁別能力については9歳までの発達が著しく、この程度はボールだけでなくラケットなど他の道具を用いるスポーツのスキル習得に影響を与える

 

  • 神経・筋コントロール能力の発達は、外部刺激への適応性が高いこの時期が好機であり、各能力の適時性にも留意する必要がある

 

  • 動作の獲得と習熟が、反射や原始的な動きを土台として、環境に適応しながら段階的にすすむ構造が下の図である

 

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画像引用:公認スタートコーチ(スポーツ少年団) 専門科目テキスト 

 

 

  •  1~7歳の基本的動作獲得期は、様々な動きへとつながる基本的な動作を獲得し、適応動作期はそこで得られた基礎がそれぞれの場面に適応しうる多彩な動作パターンに習熟する

 

  • さらに熟練動作期は、それらが熟練した動作の獲得へと移行し、環境的な制限かにおいても高度なスキルを習得していく

 

  • 神経機能の発達が著しく適応性が高い幼少年期こそ、多様な動きを経験する場の提供が重要であり、その後の生涯にわたる運動との関わり方に影響を及ぼすとも考えられる

 

 

7.筋と筋力の発達

  • 身体の発育に伴う筋力の発達期は神経系と異なり、最大発達年齢(握力)について言えば、男子12.6歳、女子が10.6歳との報告がある

 

  • 男女で異なるが、PHV年齢と照らし合わせるといずれもその約1年後と言える

 

  • 筋力の発達は主に筋肉量の増加によるが、筋肉を構成する筋線維の本数は変わらないことから、各筋線維が肥大すること、長くなることを要因として筋力の発達が生じる

 

  • この筋線維はその性質から2種類に大別される

 

  • 筋線維は、その収縮速度、発揮パワーと収縮時間によって、速筋線維(FT線維)と遅筋線維(ST線維)に区別される

 

  • 速筋線維は、収縮速度が速く発揮される筋パワーも大きいが、疲労しやすくその持続時間が短く、タイプⅡ線維や白筋とも呼ばれる

 

  • 遅筋線維は、収縮速度が遅く発揮される筋パワーも少ないが、疲労しにくくその持続時間が長く、タイプⅠ線維や赤筋とも呼ばれる

 

  • 瞬発力を必要とする運動では速筋線維、持続的な運動や姿勢保持には遅筋線維が働くことにより動きが成り立っている

 

  • この2種類の筋線維の発達時期は異なり、速筋線維はPHV年齢以前では目立った発達はみられない

 

  • 中学高校以降に急激な筋力の増加が特に男子にみられる

 

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画像引用:公認スタートコーチ(スポーツ少年団) 専門科目テキスト 

 

 

  •  これは遅筋線維の発達に加え速筋線維の発達が急激に生じたためで、この時期から素早い瞬発力を求めるような場面での運動能力の向上が見込める

 

 

8.エネルギー代謝量と最大酸素摂取量の発達

  • ヒトにおいてエネルギーは、筋肉の収縮だけでなく、生きるための体温保持、筋を含む組織の維持・合成などにも利用されている

 

  • これは運動時に必要とされるエネルギー代謝量とは異なり基礎代謝量と呼ばれる

 

  • 基礎代謝量は体重や筋量に関係し、女子よりも男子が高く、1~2歳では700kcal/日(男子)、660kcal/日(女子)であるが、PHV年齢を過ぎるまで急激に増加する

 

  • 男子では15~17歳で1610kcal/日で、女子では12~14歳で1410kcal/日とピークを迎えるが、体重あたりに換算すると乳児期が最も高く、約60kcal/㎏/日となっている

 

  • 身体活動レベルが高くなるとエネルギー代謝量も高くなる

 

  • 持続的な運動においてその強度が高まると、呼吸数とともに体内で消費される酸素量は漸増するが、その限界である最大値を最大酸素摂取量という

 

  • これは、呼吸や循環に関わる器官の機能を評価できることから、有酸素性能力(持久力)の指標として活用されている

 

  • 以下の図は、酸素摂取量の追跡的測定結果を、運動習慣やトレーニングの異なる群ごとに示している

 

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画像引用:公認スタートコーチ(スポーツ少年団) 専門科目テキスト  

 

 

野球選手のための書籍紹介② 科学する野球

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科学する野球

科学する野球―ピッチング&フィールディング (BBMスポーツ科学ライブラリー)

科学する野球―バッティング&ベースランニング (BBMスポーツ科学ライブラリー)

 

 

 

    

 

 

トレーニングの項目で紹介している参考文献になります。

 

一番の特徴としては、野球という複雑な動きを科学的に説明している点です!

 

技術や動作を指導する際には、どうしても感覚的や抽象的な言葉になってしまいがちです。

 

動作を科学的に検証し、データで把握したことを感覚的なものとすり合わせ、パフォーマンスアップにつなげることができます!

 

 

 

 

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マッスルエナジーテクニック治療 筋緊張・筋力低下・関節可動性・等尺性収縮後弛緩・相反抑制・最終域感・PIRとRI

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マッスルエナジーテクニックとは?

  • マッスルエナジーテクニックは、正確に制御された位置から、特定の方向に、遠位に加えられた圧力に対して、患者の筋が必要に応じて積極的に使用される、オステオパシーの診断および治療の一形態である

 

  • マッスルエナジーテクニックは患者が最初に労力を提供し、施術者はプロセスを促進するだけであり、その適用方法は独特である

 

  • 主要な力は患者の筋の収縮を用いて、そのときにある筋骨格機能異常を矯正するために利用される

 

  • マッスルエナジーテクニックにおける筋収縮は制御された位置で行われ、施術者によって遠位に加えられた患者の筋収縮に対する反力である

 

  • そのため、この治療法は一般的に間接法でなく直接法テクニックとして分類される

 

 

 

マッスルエナジーテクニックの利点

  • マッスルエナジーテクニックの利点のひとつは可動域を正常化することである

 

  • 患者が頚椎を右に回旋できず、左に回旋できる限り、患者は頚椎の右回旋制限を有しているということである

 

  • 頚椎の正常な回旋可動域は80°だが、患者は70°しか右回旋できないとする

 

  • ここがマッスルエナジーテクニックを用いる部位である

 

  • 硬くて制限のある筋にマッスルエナジーテクニックを使用した後、80°まで回旋できるようになるだろう

 

  • 使用されるマッスルエナジーテクニックのタイプおよび状況に応じて、この治療の目的は以下を含むことができる

 

  1. 過緊張な筋における正常な筋緊張への回復
  2. 弱い筋の強化
  3. その後のストレッチのための筋の準備
  4. 関節可動性の改善

 

 

過緊張な筋における正常な筋緊張への回復

  • マッスルエナジーテクニックの簡単なプロセスを通して、過緊張で短縮した筋を弛緩させようと試みる

 

  • もし関節可動域が制限されていると考えると、過緊張な組織の最初の評価を通じて、組織を正常化させるためにテクニックを使用できる

 

  • 特定のタイプのマッサージ療法はこのリラクゼーション効果を達成するのにも役立ち、また一般的にマッスルエナジーテクニックはマッサージ療法と併用できる

 

 

筋力低下がある筋の強化

  • 患者は筋の伸張家庭の前に収縮するよう指示されることがあり、マッスルエナジーテクニックは弱い筋または弛緩した筋の強化に使用することができる

 

  • 筋力低下している筋を収縮するよう患者に指示することで、マッスルエナジーテクニックを調整する

 

  • マッスルエナジーテクニックでは、治療家によって加えられた抵抗に対して、筋を収縮させるタイミングは変えることができる

 

  • 例えば、最大能力の約20~30%を5~15秒発揮する抵抗運動するよう患者に指示する

 

  • その後、反復の間に10~15秒休息しその過程を5~8回繰り返すように指示する

 

  • この過程により、患者のパフォーマンスは時間とともに顕著に改善される

 

 

その後のストレッチのための筋の準備

  • 患者の柔軟性を正常よりも改善させたい場合は、より積極的なマッスルエナジーテクニックアプローチが必要となる

 

  • 実際には、患者の筋の能力の標準的な10~20%よりも少し強く収縮するよう指示する形で達成される

 

  • 例えば、私たちは40~70%の筋力を発揮して収縮するよう患者に指示する

 

  • この強い収縮は、ゴルジ腱器官への刺激を増加させ、より多くの運動単位を発火させる

 

  • これは筋をよりリラックスさせる効果を持ちさらに伸張させることを可能にする

 

 

関節可動性の改善

  • マッスルエナジーテクニックを正しく用いた時、最初は筋をリラックスさせることが、関節の可動性を改善するための最良の手段の一つとなる

 

  • マッスルエナジーテクニックの重要なポイントは患者に筋を収縮させることである

 

  • その後、弛緩期間が生じ、特定の関節内でより大きな関節可動域を達成することが可能になる

 

 

マッスルエナジーテクニックの生理作用

  • マッスルエナジーテクニックには2つの主な効果があり、これらを2つの異なる生理学的プロセスに基づいて説明する

 

 

等尺性収縮後弛緩 (PIR:Post Isometric Relaxation)

相反抑制 (RI:Reciprocal Inhabition)

 

 

  • PIRおよびRIの主要な過程について議論する前に、ストレッチ反射に関与する2種類の受容体について検討する必要がある

 

 

筋線維の長さにおける、変化および変化の速度に敏感である筋紡錘

長時間の張力の変化を検出するゴルジ腱器官

 

 

  • 筋をストレッチすることは、筋紡錘から脊髄後角細胞に伝達されるインパルスの増加を引き起こす

 

  • 次に、前角細胞は筋線維への運動インパルスの増加を伝達し、伸張に抵抗するための保護的な緊張を生成する

 

  • しかし、数秒後に増加した伸張はゴルジ腱器官内で感知され、後角細胞にインパルスを伝える

 

  • これらのインパルスは、前角細胞における運動刺激の増改に対する抑制効果を有する

 

  • この抑制効果は、運動インパルスの減少および結果としてリラクゼーションを引き起こす

 

  • これは、ゴルジ腱器官の保護的な弛緩が筋紡錘による保護的な収縮を無効にするため、筋の長時間の伸張が伸張能力を増加させることを意味する

 

  • しかし、筋紡錘の速い伸張は筋の収縮を即自的に引き起こし、持続しないため、抑制作用はない

 

  • これは基本的な反射弓として知られている

 

 

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伸張反射弓:筋紡錘を活性化するため素早い手による伸張

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ

 

 

  • PIRは、等尺性収縮が持続されたとき、脊髄を介して筋自体への神経学的フィードバックから生じ、そして収縮した筋の緊張低下を引き起こす

 

  • この緊張の減少はおよそ20~25秒続き、この弛緩期間の間に組織を新しい安静時長までより容易に動かすことができるため、関節可動域を改善させる完璧な機会を得ることができる

 

  • RIを使用するとき、緊張の減少は筋の収縮に対する拮抗筋の生理学的抑制効果に依存する

 

  • 主動作筋を収縮させる運動ニューロンが求心性経路から興奮性インパルスを受ける時、反対の拮抗筋の運動ニューロンは同時に抑制インパルスを受け、拮抗筋の収縮を妨げる

 

  • つまり、主動作筋の収縮または伸張は、拮抗筋を弛緩または抑制を誘発しなければならないことになる

 

  • しかしながら、主動作筋の素早い伸張は同じ主動作筋の収縮を促進する

 

 

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等尺性収縮後弛緩

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ

 

 

 

  • マッスルエナジーテクニックのほとんどの応用において、最終域感を感じる位置、または、その位置のわずか手前はマッスルエナジーテクニックを実行するのに望ましいポジションである

 

  • 明らかに、マッスルエナジーテクニック他のテクニックと比較して非常に軽いストレッチなので、その使用はリハビリてーよんにおいてより適切である

 

  • また、筋の短縮を伴うほとんどの問題は姿勢筋におこることに留意すべきである

 

  • これらの筋は主に遅筋線維で構成されているので、より軽いストレッチの形態が適切である

 

 

 

マッスルエナジーテクニック治療

  • 患者の手足の抵抗が感じられる点、すなわち最終域感を感じる位置まで動かす

 

  • それは、治療しようとしている患部における最終域感を感じるわずか手前の位置まで柔らかくする場合、特にこれらの組織が慢性期にある場合、患者にとってより快適な状態にすることができる

 

  • 施術者によって加えられる抵抗に対しておよそ10~20%の筋力を発揮して、治療すべき筋または拮抗筋を等尺性収縮するよう指示する

 

  • アプローチの方法が等尺性収縮後弛緩(PIR)である場合、患者は主動作筋を使用する

 

  • そして、硬くて短縮した組織を直接リリースする

 

  • マッスルエナジーテクニックの相反抑制(RI)を用いる場合、患者には拮抗筋を等尺性収縮するよう指示する

 

  • これは硬くて短縮した組織として分類された拮抗筋とは反対の筋群(主動作筋)において市観光課を発揮する

 

  • 等尺性収縮をゆっくり行い、10~12秒間持続させ、治療されている部位の疼痛が生じないように指示する

 

  • この収縮は、筋紡錘から錘内線維に影響を与え、ゴルジ腱器官に負荷を与えるために必要な時間である

 

  • これは、筋紡錘からの影響を無効にする効果があり、筋緊張を抑制する

 

  • これにより施術者は最小限の労力で患部を新しい位置へ持っていけるようになる

 

  • 収縮により不快感や緊張を引き起こさないようにすべきである

 

  • 深呼吸して完全にリラックスするように指示し、施術者は過緊張の筋を伸張する特定の関節を新しい位置に他動的に動かし、関節可動域を正常化する

 

  • 等尺性収縮後弛緩を誘発する等尺性収縮後、15~30秒の弛緩期間がある

 

  • この期間は組織を新しい安静時長に伸張するのに最適な期間になる

 

  • それ以上進行しなくなるまでこの過程を繰り返し(通常3~4回)、最後の静止位置にておよそ25~30秒保持する

 

  • 25~30秒の期間は神経系がこの新しい静止位置にロックするのに十分な時間であると考えらえる

 

  • このタイプのテクニックは、硬く短縮した軟部組織において緊張を緩和し、弛緩させるのに優れている

 

  • 相反抑制により、約20秒の不応期(安静時上体の回復に必要な短い期間)が生じる

 

  • しかしながら、相反抑制は等尺性収縮後弛緩よりも万能でも強力ではないと考えられている

 

  • 主動作筋の使用は痛みまたは損傷のために、時には不適切となるため、施術者は両方のアプローチを使い分ける必要がある

 

  • マッスルエナジーテクニックで使用される力は最小限なので、障害または組織損傷の危険性が軽減される

 

 

マッスルエナジーテクニック治療の方法

最終域感を感じる位置(制限バリア)

  • 最終域感のポイントまたは制限バリアは、施術者の触診する手や手指によって抵抗が最初に感じられたときに生じる

 

  • 繰り返し練習して経験を積むことにより、施術者は患部が緩やかに最終域感を感じる位置まで、軟部組織の抵抗を触知することができる

 

  • この最終域感を感じる位置は伸張の位置ではなく、伸張の直前の位置である

 

  • 施術者はストレッチが生じたと感じる時に、その違いを感じるべきで、患者からの反応を待つべきである

 

 

急性期および慢性期

  • マッスルエナジーテクニックで治療される軟部組織の状態は、一般的に急性期または慢性期のいずれかに分類され、何らかの形の緊張または外傷を有する組織に関連する傾向がある

 

  • マッスルエナジーテクニックは急性期および慢性期の両方において使用することができる

 

  • 急性期とは、痛みやスパズムあるいは3~4週間以内に生じた深刻な症状を含む

 

  • マッスルエナジーテクニックのどの方法が適しているかは、病期で判断する

 

  • 発症から時間が経過し、明らかに急性期でないものを慢性期とみなす

 

  • 提示された状態が比較的急性期であると感じるならば、等尺性収縮は最終域感を感じる位置で行う

 

  • 患者に筋を10秒間等尺性収縮させた後、施術者は新しく最終域感を感じる位置を常に意識して患部を進めていく

 

  • 慢性期の状態では、等尺性収縮は最終域感を感じる位置の直前の位置から始める

 

  • 患者に筋を10秒間等尺性収縮させた後、施術者は最終域感を感じる位置を通り、特定の部位を新しい位置まで進めることを奨励される

 

 

PIRとRIの比較

  • 患者にどのくらいの痛みがあるのかによって、一般的にどの方法を最初に適用するかを決定する

 

  • 等尺性収縮後弛緩法は通常、短縮し硬いと分類される筋のために選択されるテクニックである

 

  • これらの筋は、リリースと弛緩の過程で最初に収縮するからだ

 

  • しかしながら、しばしば患者は主動作筋すなわち短縮した組織が収縮した時に不快感を覚えることがある

 

  • この場合、反対の拮抗筋を収縮させるほうがより適切であるように考えられる

 

  • それは、患者の痛みの近くを低下させ、痛みを伴う組織を弛緩させるからである

 

  • したがって、通常は痛みがない拮抗筋を使用した相反抑制の使用は、主に短縮した組織に痛みが増強される場合に第一選択となる

 

  • 患者の初期の痛みが適切な治療によって軽減したとき、等尺性収縮後弛緩法を組み込むことができる

 

  • 等尺性収縮後弛緩法は相反抑制と対照的に、硬く短縮した組織の等尺性収縮を用いる

 

  • 最良のアプローチを決定する主な要因は、敏感である組織が急性期か慢性期どうかによる

 

 

 

参考文献

骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

野球ギア紹介⑧ スピンチェッカー

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スピンチェッカーとは?

  • 両サイドがカットされているので、ボールを中心で握る習慣が身につきます

 

  • 少しの乱回転でも大きく目に見えて変化するため、視覚確認も容易です

 

  • 横回転などクセのある回転を改善したいプレイヤーに最適です

 

 

 

スピンチェッカーで練習するメリット

  • ボールの回転軸を確認することができる

 

  • 回転軸の確認により、腕をどのように振っているのがわかる

 

  • 回転軸を修正することでキレのあるボールを投げられるようになる

 

 

 

 

 

 


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野球ギア紹介シリーズ』の復習をしたい方はコチラ

⇩⇩⇩

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野球ギア紹介⑦ キレダス

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キレダスとは?

  • 視覚的な投球改善を可能にしたKIREDASならボールを前で離す感覚が驚くほど掴める!効果が1日で分かる!投球指導に最適なアイテム!

 

  • 投手はキレが出て低めも伸びる球に!

 

  • 野手は正確なスローイングで矢の様な送球に!

 

  • 全ての選手が怪我をしにくい投げ方に!

 

  • 正しくボールを押し出すことができれば綺麗にキレダスを投げれます!

 

 

キレダスはこんな方に使って頂きたい!

  • 子供に正しい投球フォームを教えたい親や指導者

 

  • 更なる球速や制球力UPをしたい方

 

  • 長年野球をしてきたが、新たな気づきを欲してる方

 

  • スポーツの基本の投げる動作を指導する学校の指導者

 

 

キレダスが選ばれる理由

  1. ボールを押し出す感覚が身に付く!リリース時の微妙な指の感覚が明確に感じ取れ、キレのある球の習得に!
  2. 1日で効果が分かる!投球を視覚的に改善できる投球改善アイテム!
  3. 投げるという原点の楽しさを味わえる!キレダスを使用し、1日で小学生達が遠投で5m〜20m伸びたといったお声も頂きます。

 

 

キレダスはどうやって使うの?  

 

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キレダスで練習するメリット

  • リリースポイントをつかむことができる
  • コントロールが良くなる
  • ボールを押し出す感覚をつかめる
  • ボールの回転が良くなる
  • 身体全体を使って投げることができる
  • 球のスピードが速くなる
  • 遠投の距離が長くなる

 

 

 

          

 

 

 

 

 


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脚長差と骨盤 脚長差の種類・脚長差の評価・脚長差と中殿筋の関係・脚長差と体幹頭部の関係

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脚長差の定義

  • 脚長差は、一側の脚が他側より短い状態である

 

  • その脚長差は実際の海保学的な差なのか、見せかけの差なのかどうか決定しなければならない

 

  • その状態と様々な歩行パターンや走行力学の機能異常に結び付けて評価する

 

  • 脚長差は側弯症、腰痛、仙腸関節機能異常、脊柱や股関節、膝関節における骨関節炎と同様に、姿勢機能異常に関連付けられる

 

  • さらに、股関節、脊椎、下肢の疲労骨折でさえ脚長変化と関連が認められる

 

脚長差のタイプ

1.構造的

  • これは骨格系の実際の短縮である

 

  • 一般的に以下の4つのうちのひとつに起因する

 

  1. 先天欠損  (先天性股関節形成不全関節など)
  2. 手術    (人工股関節全置換術など)
  3. 外傷    (大腿骨または脛骨の骨折など)
  4. 疾病の作用 (腫瘍、骨関節炎、オスグット病など)

 

2.機能的

  • これは足関節と足部の過回内や過回外骨盤の傾斜マッスルインバランス(例えば中殿筋や腹筋の弱化、もしくは股関節内転筋群や屈筋群のタイトネス)、股関節や膝関節の機能異常などのような、下半身における生体力学的な変更により生じる

 

3.特発的

  • 明らかな所見が問診や評価プロセスのなかに存在しない場合、特発性に分類するだろう

 

  • それは何かしらの状態に起因するものでなく、単独に生じていることを意味する

 

脚長差の評価

立位バランス検査

  • 患者に片脚立位となり反対側の膝を腰の高さまで上げるように指示する

 

  • この時、治療家は体重を支持した片脚に移していく際の上後腸骨棘レベルを観察する必要がある

 

  • 本来は、支持脚の中殿筋による良好な筋制御により支持脚上に体重を移すことができる

 

  • しかし、左脚の上後腸骨棘が下がる場合、左側は水平な状態よりも引き上げられている

 

  • これは右側の中殿筋における制御がうまくできないと見なされる

 

  • 彼らは歩行周期において、歩行の変更されたパターンを同様に生じることがある

 

  • この歩行パターンはトレンデレンブルグ歩行と呼ばれ、弱化した中殿筋として示される

 

  • この歩行機能異常が長期間にわたって存在する場合、代償性のトレンデレンブルグ歩行に発展する可能性がある

 

  • これが生じる原因は非常に多い

 

  • しかし、原因のひとつは一側の内転筋の短縮によるためであり、内転させられたポジションを維持される可能性がある

 

  • この変更されたパターンは、拮抗筋に対し相互制御の結果をもたらす

 

  • 中殿筋が股関節外転筋である観点から、脚は延長した状態を維持され中殿筋が弱化するような要素を作る

 

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立位バランステスト正常 

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ

 

 

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立位バランステスト陽性-右中殿筋の弱化、左上後腸骨棘の下降

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ


 

 

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トレンデレンブルグ歩行-左中殿筋の弱化

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ

 

脚長差と中殿筋の関係

  • 脚長差はどのように殿筋に影響を及ぼすのだろうか

 

  • 代償パターンを持っている時、大腿骨は水平面上で回転する代償だけでなく、前額面における内転や外転の代償性メカニズムを経験する

 

  • 下肢は内転したポジションを維持されるかもしれない

 

  • したがって、外転筋群は伸張されることを強制され、その後、弱化される位置となる

 

  • その間に、内転筋群は短縮された位置となり、その後、固まった肢位となる

 

  • 外転した位置が保持される場合には、状況は逆転する

 

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内転筋群と腰方形筋の短縮と硬結に伴う中殿筋と大腿筋膜張筋の伸張弱化 

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ

 

 

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内転筋群と腰方形筋の伸張弱化に伴う中殿筋と大腿筋膜張筋の短縮と硬結 

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ

 

脚長差と体幹頭部の関係

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機能的脊柱側弯症

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ

 

 

  • 高位の寛骨側である左肩が低いポジションにあることは、代償性の機能的脊柱側弯症において一般的にみられる

 

  • 一部の研究者は、『利き手傾向のパターン』の結果として考慮している

 

  • 腸骨稜と肩ポジションが非対称的な位置にある場合、ある形の脊柱側弯症が存在する

 

 

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機能的脊柱側彎症-左腰方形筋は短く硬い

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ



  •  上行性機能的脊柱側彎症の結果、左側の肩はより高くなる

 

  • そして、頚椎のより短いCカーブについて同様に気付くかもしれない

 

  • これは、おそらく右側の斜角筋、胸鎖乳突筋、上部僧帽筋と肩甲挙筋の短縮が原因で、その後、固まった肢位となったのであろう

 

  • このマッスルインバランスによる典型的適応は、視線レベルで真っ直ぐな頭のポジションを維持するのを助ける

 

  • 環椎後頭関節のポジションを自然に適応させることを通じて、身体は常に水平を維持する

 

  • そして、これを達成するためにはあらゆる身体的変更が行われ、平行の維持と永続的な痛みにより耐え難い苦しみとなる

 

  • 一般的に、頭痛、活発なトリガーポイント、耳鳴り、顎関節症、眼や顔の痛みの病態を呈することがある

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

参考文献

骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

歩行と骨盤の関係 歩行周期・踵接地・筋膜連結

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歩行周期

  • 歩行周期は立脚相と遊脚相に分けられる

 

  • 各歩行周期は立脚期における先行する脚の踵接地から始まり、遊脚期を経て、同じ側の脚の次の地面との接触で終了する

 

  • 立脚期はさらに踵接地、立脚中期、推進期に分けられる

 

  • 人間の歩行は非常に複雑で、調整された一連の運動である

 

  • 歩行周期を簡単に捉えるには、相に分けて考えることである

 

  • 立脚期は各歩行周期における体重を支える部分であり、踵接地で始まり、同側の踵離地で終わる

 

  • 立脚期は一歩行周期の約60%を占め遊脚期は約40%を占めると推定されている

 

 

踵接地

  • 踵接地において、右足部が地面に接地する直前の身体の位置を考えると、右股関節は伸展位、右足関節は背屈し、足部は回外位となっている

 

  • 前脛骨筋は後脛骨筋をサポートし、足関節と足部の背屈と内返し位を維持する働きをする

 

  • 歩行では、踵接地の始まりにおいて約2°回外位で地面に接地する

 

  • 正常な足部では、距骨下関節が約5~6°回内位から約3~4°回内位に動き、これが足部の「可動アダプター」として機能する

 

 

筋膜連結

  • 踵接地で関節と足部が背屈および回外位になったとき、前脛骨筋は、筋膜スリングのリンクシステムの一部となっている

 

  • このスリングは、前脛骨筋の起始から始まり長腓骨筋の停止部を経由し、長腓骨筋の起始でもある腓骨頭に終わる

 

  • この骨性ランドマークは大腿二頭筋の停止でもある

 

  • スリングは大腿二頭筋として坐骨結節に向かい、坐骨結節を経由し、仙結節靭帯に付着する

 

  • 大腿二頭筋はしばしば坐骨結節というよりも仙結節靭帯に直接付着し、30%以上の大腿二頭筋は仙骨下外側角に直接付着いていた、という報告もある

 

  • このスリングは仙結節靭帯に続き、仙骨の下方に位置する下外側角に筋膜接続し、反対側の多裂筋および後頭骨につながる脊柱起立筋に接続する

 

  • この筋膜スリングは後縦走スリングとして知られている

 

  • 踵接地期では、踵接地する直前にも関わらず、足関節背屈によって大腿二頭筋と長腓骨筋の収縮が同時に誘発される

 

  • 大腿二頭筋の収縮は腓骨等に付着する長腓骨筋と連携しており、大腿二頭筋の収縮力の約18%の力が長腓骨筋に伝達される、という報告もある

 

  • この同時収縮は、胸腰筋膜を巻き上げ、下肢の安定化を図るための機構とされているが、結果としては、続く推進期で解放される必要な運動エネルギーの充填を行っている

 

  • 筋膜が伸張された後縦走スリングによって増加した伸張は大腿二頭筋を経由し、仙結節靭帯に集中する

 

  • この結合は仙腸関節の動的安定化機構を補助する

 

  • 歩行周期における荷重期のための仙腸関節のセルフロッキングと骨盤の安定化を図っている

 

  • 遊脚期の間に右腸骨が後方回旋し、仙結節靭帯が伸張されることによって仙腸関節のフォースクロージャーが働いていることがわかる

 

  • 右寛骨後傾運動と同様に大腿二頭筋の収縮によって右の仙結節靭帯が伸張される

 

  • 同時に左寛骨は前方回旋し、仙骨は左傾斜軸上で左捻転、つまり前方回旋する

 

  • この腰椎骨盤複合体の特殊な動きは、右踵接地のたびに必ず起こる

 

  • 踵接地の直前では股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈し、足部は回外する

 

  • 前脛骨筋および後脛骨筋は足関節と足部のこの位置を維持し、さらにこれらの2つの筋は接地の際、遠心性収縮によって距骨下関節の回内速度を制御する役割を果たしている

 

  • 右足の踵接地から足趾離地までの間、骨盤が右にシフトすることによって、重心が右足に移動する

 

  • この動きは足趾離地まで続き、この間、右寛骨は前方回旋、左寛骨は後方回旋し始める

 

  • 立脚中期では、骨盤の自然な前傾と仙結節靭帯の緩みによって、ハムストリングスの緊張を緩めるところである

 

  • この時点でのフォームクロージャーは、立脚後期で徐々に失われるため、ここでの安定性は主にフォースクロージャーによって維持されている

 

  • これは立脚中期のポイントで、右側の大殿筋は左側の広背筋と協力し、右下肢の継続的な伸展運動の役割を果たしている

 

  • これら2つの筋の自動収縮は胸腰筋膜の張力を高め(後斜走スリング)、それによって右立脚中期の間の右仙腸関節に必要なフォースクロージャーにを提供している

 

  • 立脚中期で大殿筋の位相性の収縮が起こると、反対側の広背筋の収縮が同時に起こる

 

  • 広背筋は上肢を伸展させることにより、逆回転を通して推進力を助ける

 

  • 結合組織の膜である胸腰筋膜は、大殿筋と反対側の広背筋の間に位置し、この膜構造は大殿筋と広背筋の収縮によって張力が高められている

 

  • この増加した張力は、フォースクロージャーにによって、立脚期の仙腸関節の安定化に役立っている

 

  • 踵接地は歩行の推進期への移行を意味し、このときの大殿筋の収縮は、ハムストリングスの収縮に重ね合わされる

 

  • 大殿筋の活性化は脚を推進しながら肩を伸展している反対側の広背筋の収縮と強調して起こる

 

  • 相乗的な大殿筋および反対側の広背筋の収縮は、胸腰筋膜の緊張を作り出し、その解放が歩行に使われるか筋力の補助となる

 

  • 胸腰筋膜に蓄積されたエネルギーは歩行周期のエネルギー消費を低減させるのに役立つ

 

  • 大殿筋に連続する下肢を含む後斜走スリングは、腸脛靭帯の張力の増加に作用し、歩行における立脚期の間、膝の安定化に役立つ

 

 

 

 

 

姿勢に関する復習をしたい方はこちら

 

 

 

 

参考文献

骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

コアマッスルと仙腸関節 腹横筋・多裂筋・内圧の増加・後斜走スリング

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コアマッスルとの関連

インナーコアユニット(ローカルシステム)

  • インナーコアユニットは以下の筋より構成されている

 

  1. 腹横筋
  2. 多裂筋
  3. 横隔膜
  4. 骨盤底筋

 

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インナーコアユニット

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ 

 

腹横筋
  • 腹横筋は最も深層に位置する腹部筋である

 

  • 腸骨稜、鼡径靭帯、腰部筋膜、下位6つの肋軟骨に起始し、剣状突起、白線、恥骨に停止する

 

  • 腹横筋の重な作用は腹壁において「引き込み」を介して腹圧を高めることである

 

  • この「引き込み」は臍の脊柱方向への動きとして観察することができる

 

  • この筋は屈筋でも伸筋でもない

 

  • Kendallらも、「この筋は体幹の側屈には作用せず、白線を安定させることにより前外側に位置する筋(内・外腹斜筋)の良好な活動が許容される」と述べている

 

  • 腹横筋はインナーユニットの鍵になることは明らかである

 

  • Richsrdsonらは、腰痛がない人の場合、腹横筋は肩の運動よりも30ミリ秒前に、下肢の運動よりも110ミリ秒前に筋発火が生じていることを報告している

 

  • これは、腹横筋が四肢骨格の動作パターンに対して、必要となる安定性を提供するための鍵となる役割を持つことを示唆している

 

  • 腹横筋は吸気時において、中心腱を下方へ引き平坦となり、胸腔の垂直方向の長さを増加させ、多裂筋を圧迫する

 

 

腹横筋の起始・停止などを復習したい方はコチラ

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多裂筋
  • 多裂筋は腰部筋のなかで最も深層に位置する

 

  • 筋線維は近隣の腰椎棘突起から起こり、乳頭突起へ付着する

 

  • 筋線維は尾方へ放射状に走行し、横突起を横断してL2/L5に位置する

 

  • 仙結節靭帯と遠位部で結合しているいくつかの筋線維と同様、これらの筋は第5腰椎を腸骨と仙骨へ固定する

 

  • 多裂筋は小さい筋の集合体を考えられており、これらはさらに表層部と深層部に分類される

 

  • 仙骨尖部よりも仙骨底部の方が多裂筋の容積は大きく、特に下外側角部よりも左右の上後腸骨棘間の領域で大きい

 

  • 伸展筋力を発揮する多裂筋の役割は、前方への体幹屈曲やこの上部で生じる剪断力に対抗する作用と同様、腰椎を安定させるために大変重要である

 

  • さらに多裂筋は、椎間板への圧力を軽減する機能を持つため、最終的に体重が前腰椎へ分配される

 

  • 表層に位置する多裂筋は、腰椎を垂直方向に保持する役割を持ち、深層に位置する多裂筋は脊柱全体の安定性に貢献している

 

  • Richsrdsonらは多裂筋と腹横筋は腰椎安定化の鍵となる筋であることを報告した

 

  • 両筋は、Richsrdsonらが「障害から腰部を守る天然の深層コルセット」と呼んだ胸腰筋膜と結合している

 

  • 近年、Richsrdsonらは、仙腸関節において筋がどのように作用しているか超音波ドップラー法により調査した

 

  • 彼らは、腹横筋と多裂筋は共同収縮して仙腸関節の固定性を高め、負荷が生じている場合ではこれらの筋が仙腸関節を圧迫して関節安定性を高めるために不可欠であるとともに、この圧迫は適切なタイミングで生じることが重要であることを示した

 

 

多裂筋の起始・停止などを復習したい方はコチラ

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内圧の増幅
  • Osarによると、筋収縮により筋膜内の内圧を増幅する作用が生じる

 

  • すべての筋線維の内側では、筋収縮が生じると筋線維は胸腰筋膜を圧迫して関節周囲の硬化が生じる

 

  • 脊柱では、胸腰筋膜内にある脊柱起立筋の多裂筋の硬化により体幹伸展力が発揮され、脊柱伸展を助ける

 

  • Osarは、腰椎背側多裂筋が収縮した場合、後方の腰背筋膜へその力が広がると述べている

 

  • このような効果は、腹横筋の収縮を助け、脊柱起立筋や多裂筋の周囲にある胸腰筋膜を硬化させ、これにより脊柱を安定させる

 

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多裂筋が収縮すると胸腰筋膜を圧迫し、腹横筋の収縮とともに内部の区画の安定性をもたらす

 

 

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水平面から見た安静時の多裂筋

腹横筋と多裂筋の共同収縮は胸腰筋膜の硬化を引き起こし、内部の区画の安定性をもたらす

 

 

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腹横筋が収縮すると胸腰筋膜が緊張し、これに対して多裂筋と腰部脊柱起立筋が収縮し、脊柱の伸展と効果が生じる

恥骨筋の収縮は白線を緊張させ、腹横筋の収縮に対して安定性を与える 

 

 

画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ 

 

 

アウターコアユニット(グローバルシステム)

  • フォースクロージャーにかかわるアウターコアユニットは、4つに統合された筋膜スリングシステムから構成されている

 

  1. 後縦走スリング
  2. 外側スリング
  3. 前斜走スリング
  4. 後斜走スリング

 

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画像引用:骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ 

 

 

 

  • これらの筋膜スリングはフォースクロージャーをもたらし、その結果として骨盤帯の安定性につながる

 

  • これらのスリングのいずれかが欠損または弱化した場合でも、腰部骨盤領域の疼痛や機能異常を引き起こす

 

  • アウターコアユニット属する筋群が個々にトレーニングされた場合、効果的なフォースクロージャーを発揮して適切な機能やパフォーマンスが遂行されるためには、筋膜スリングの個別的な協働収縮やリリースが要求される

 

  • 統合された筋膜スリングシステムでは多くの力が存在し、いくつかの筋が関与している

 

  • ひとつの筋はひとつ以上のスリングシステムに関与しており、またスリング同士が重なり結合しているため、上肢の動きに依存する

 

  • アウターユニットにはコントロールスリング(内側と外側の2区画)、矢状スリング(前方と後方の2区画)、そして、斜走らせんスリングを含むいくつかの筋膜システムに関与するスリングが存在する

 

  • 仮説として、スリングは起始と停止を持たないものの、力を伝達する補助のために結合していると考えられる

 

  • これにより、スリングはすべての内的結合筋膜システムとして機能しており、ある運動では全体のスリングの一部が選択的に機能している可能性がある

 

  • フォースクロージャーを修復する時や、なぜスリングの一部が動作を抑制または低下させるかを理解することは、ある特定の筋機能異常(弱化、不適切な活動、あるいは硬化)の同定と治療を行う場合に重要となる

 

  • 以下がそのポイントである

 

1:アウターコアの4つのシステムは、身体の土台となる力を生じさせるために必要な関節硬化や安定性に寄与するインナーコアユニットに依存している

 

2:アウターユニットの作用中におけるインナーユニットの低下は、しばしばマッスルインバランス、関節障害、そして、パフォーマンス低下を引き起こす

 

3:アウターユニットは近代的なトレーニングマシンにより効果的に調整することはできない。トレーニングマシンの種類の違いは日々の機能的運動に関連しない。

 

4:アウターユニットの効果的な調節方法には、対象者の作業やスポーツ活動内容に即した運動パターンを用いたインナーユニットの機能を統合した運動が要求される

 

 

 

姿勢に関する復習をしたい方はこちら

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参考文献

骨盤と仙腸関節の機能解剖 骨盤帯を整えるリアラインアプローチ(医道の日本社 John Gibbons)

 

頚椎捻挫 牽引テスト・並進テスト・ストレステスト・回旋テスト・不安定性テスト・スタビライゼーション・牽引・神経モビライゼーション

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頚椎捻挫

  • 頚椎捻挫は、頚椎の亜脱臼や靭帯に障害を受けるため、様々な神経症状を呈するようになる

 

  • 視診では、頚椎の前弯角度の減少や斜頚位が認められる

 

  • 主訴としては、めまい、耳鳴り、視覚障害、痺れ、疼痛等の症状を訴えることが多い

 

  • 上位頚椎は、後頭骨と環椎そして軸椎で形成されている

 

  • 環椎は、円形で椎体が存在しない

 

  • 軸椎は、歯突起が上部に突出し後方に大きな棘突起を持っている

 

  • 上位頚椎は椎間板を持たず、左右の椎間関節は側方やや前方に位置する

 

  • 軸椎の歯突起は前方では環椎の椎弓と、後方では横靭帯と関節を形成している

 

  • 頭蓋および上位頚椎領域における靭帯の不安定性は、上位頚椎領域の血管や神経構造にも障害を引き起こす

 

  • 環軸関節の不安定性は、脊髄神経に異常な圧力を引き起こし、椎骨動脈や神経根をも圧迫する可能性がある

 

  • したがって、上位頚椎の安定性や椎骨動脈のテストを行い、構造体の状態を確認する必要がある

 

  • そして、上位頚椎に問題がなければ、下位頚椎の評価治療に移る

 

頚椎捻挫における問題点

  • 複合損傷であることが多い

 

  • 上位頚椎の靭帯損傷による過可動性

 

  • C4、C5分節の複合靭帯損傷による過可動性

 

  • 椎間板の脱出や椎体の終板の損傷

 

  • 胸鎖乳突筋、頚長筋などの筋損傷

 

  • 椎間関節の骨折、亜脱臼、関節軟骨の損傷、関節包の損傷

 

  • 脳-脊髄損傷

 

  • 交感神経や椎骨動脈の損傷

 

  • 痛みが腰椎に波及することもある

 

上位頚椎の安定性に重要な靭帯

蓋膜

  • 環椎横靭帯を後方から覆う幅広い膜であり、後頭骨の斜台起こり第2・3頚椎体の後方で後縦靭帯に続いている

 

 

翼状靭帯

  • 軸椎の歯突起と後頭骨を強固に連結している

 

  • そのため、上位頚椎の連結パターンにもっとも影響を及ぼしている

 

  • 翼状靭帯の伸張や断裂は、上位頚椎の間で過度の回旋を引き起こし、椎骨動脈を過度に圧迫し、損傷を受けやすくなる

 

  • 翼状靭帯の損傷に伴う症状としては、頭痛(後頭部)、めまい・嘔吐、四肢の感覚障害・四肢麻痺、視力障碍、耳鳴り、バランス障害などがみられる

 

 

環椎横靭帯

  • 歯突起を環椎の腹側椎弓を強固に固定し、回旋のコントロールを行うだけでなく、歯突起の後方移動による脊髄の圧迫を防いでいる

 

  • 環椎横靭帯の損傷に伴う症状としては、足下をみるときしばしばめまいを生じる

 

  • 下肢の麻痺、眼振、嚥下障害、下の感覚障害、咽頭の違和感、頭痛、耳鳴り、バランス障害などがみられる

 


上位頚椎の安定性のテスト

蓋膜のためのテスト

1.牽引テスト
  • 患者は背臥位、もしくは座位

 

  • セラピストは患者の頭側に立つ

 

  • 一方の手で軸椎の歯突起と椎弓を固定する

 

  • もう一方の手を後頭骨の背側にあてがい、易しく頭部を牽引する

 

  • もし、動きが1~2㎜以上あれば陽性である

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法 

 

 

2.上位頚椎を屈曲位での牽引テスト
  • 牽引テストを発展させた方法

 

  • 上位頚椎を屈曲位にして牽引を加える

 

 
3.上位頚椎屈曲テスト
  • 患者は背臥位

 

  • 軸椎の椎弓を固定し、セラピストの肩と同側の手で菅屋の頭を前後から挟む

 

  • 上位頚椎だけを屈曲させる

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

 

4.上位頚椎腹側並進テスト
  • 患者は座位

 

  • セラピストは一方の手を患者の後頭骨下部に置く

 

  • もう一方の手は前方から軸椎横突起に置いて固定する

 

  • 後頭骨を腹・頭側へ動かす

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

 

翼状靭帯のためのテスト

1.側屈ストレステスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは軸椎の椎弓から棘突起を一方の手と母指手固定する

 

  • もう一方の手で頭部を把持する

 

  • 後頭骨と環椎を側屈させる

 

  • 上位頚椎を屈曲位、中間位、伸展位でも行う

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

2.回旋テスト
  • 患者は座位

 

  • セラピストは軸椎の椎弓から棘突起を一方の手の母指と示指で固定する

 

  • もう一方の手で頭部を把持する

 

  • 後頭骨と環椎を回旋させる

 

  • もし、20~30°以上の回旋がみられる場合、反対側の翼状靭帯の損傷が示唆される

 

  • また、過度の回旋の動きが同側への過度の側屈を伴う場合、翼状靭帯の損傷が示唆される

 

  • 過度の回旋の動きが反対側の過度の側屈を伴う場合、環軸関節性の不安定性が示唆される

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

3.上位頚椎回旋テスト
  • 患者は座位

 

  • セラピストは下方の手の示指と中指を軸椎の椎弓に置き、尾背側へ押すように固定する

 

  • 上方の手は示指を乳様突起、中指を環椎横突起に置き、回旋を加えるように頭腹側へ動かす

 

  • このテストは、軸椎に対する後頭骨・環椎の回旋の動きの質と量を評価するためのテストである
 

 

4.側方並進運動テスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは環椎を右手母指と示指の間を用いて右から他動的に固定し、環椎が左方へ移動した状態を維持する

 

  • そして、左手母指と示指の間を用いて軟部組織のたわみを取り、軸椎を右方向に動かす

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

5.環軸関節の後方安定性テスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは患者の頭側に立ち、両手掌全体で患者の後頭骨を把持し、左右の示・中指を患者の環椎と軸椎の横突起から棘突起に置き、後頭骨に対して環・軸椎を同時に腹側へ動かす

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

6.環軸関節の前方不安定性テスト
  • 患者は背臥位

 

  • セラピストは患者の頭側に立つ

 

  • 左右の母指を患者の環・軸椎の左右の横突起の前・側方に置き、両手掌全体と残りの指で後頭骨を背側から固定する

 

  • そして、両母指で同時に環・軸椎を背側へ動かす

 

  • 正常では、動きはほとんど認められない

 

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画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法  

 

 

 

治療

  • 上位頚椎に不安定性が認められた場合、基本的に徒手療法は禁忌となる

 

  • 頚椎の深部筋に対するスタビライゼーションは、不安定性を保護するためにも必要である

 

  • 下位頚椎の不安定性により椎間孔が狭窄し、神経根が圧迫されて疼痛やしびれなどの症状が出現している場合、頚椎の牽引や神経のモビライゼーションを行う

 

 

1.スタビライゼーション

  • 上位頚椎周囲の深部筋を中心にしたスタビライゼーションは、眼球の動きと上位頚椎の動きが同調していることを利用して行われる

 

 

背側の筋のスタビライゼーション
  • まずは眼球だけで上方視を行ってもらう

 

  • 頚椎は動かさないように注意する

 

  • 5~7秒間上方視し、休憩を5秒入れて、10回繰り返す

 

  • 最初は深部筋だけが収縮するように注意して行う

 

  • うまくできるようになれば、真横や斜め上、上下にも動かすとよい

 

  • 次に、座位になり、眼球で上方視しながら頭部から体幹を真っ直ぐにしたまま、股関節屈曲し、ゆっくり戻す

 

  • 1回につき5秒程度時間をかけて行うとよい

 

  • 休憩を入れて、10回繰り返す

 

  • 頚部の背側にベルトやタオルで抵抗をかけて、スタビライゼーションを行うこともできる

 

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過可動性のある部位に対するスタビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

腹側の筋のスタビライゼーション
  • まずは眼球だけで下方視を行ってもらう

 

  • 頚椎は動かさないように注意する

 

  • 5~7秒間上方視し、休憩を5秒入れて、10回繰り返す

 

  • 最初は深部筋だけが収縮するように注意して行う

 

  • 次に、患者に5~7秒下方視しているときに、セラピストが一方の手で患者の頭を背側から把持し、腹側から眉間に抵抗をかける

 

  • もしくは、5~7秒間下方視しながら自分の両母指で眉間に抵抗をかける

 

  • どちらも休憩を入れて10回繰り返す

 

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過可動性のある部位に対するスタビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

2.牽引

  • 椎間孔の狭窄により症状が出現している場合、椎間孔を開大させて症状の改善を図る目的で行う

 

 

頚椎全体の牽引治療
  • 患者は座位か背臥位

 

  • セラピストは患者の背側に立ち、両手で患者の頭部を把持し、頭部の重さを取り除く程度の力で頭部を30秒以上牽引する

 

  • 症状の改善が認められるなら、1分程度行う

 

  • 疼痛などの症状が強い場合は、もっとも症状が軽い肢位で行い、症状の改善に合わせて中間位で行うようにする

 

 

セグメント単位の牽引治療
  • 患者は座位か背臥位

 

  • セラピストは一方の手で牽引を行うセグメントの尾側の椎体を固定し、もう一方の手を頭側の椎体の横突起から椎弓にあてがう

 

  • 頭側にわずかな力で30秒以上牽引する

 

  • 症状の改善が認められるなら、1分程度行う

 

 

3.神経モビライゼーション

牽引を加えての神経モビライゼーション
  • 患者は座位か背臥位

 

  • 正中神経レベルのモビライゼーションを行う場合、セラピストは患者の背側に立ち、両手で患者の頭部を把持し牽引する

 

  • 患者は、その状態で患側上肢の肩関節を伸展・外転・外旋、肘関節を伸展、前腕を回外、手関節を背屈、手指伸展する

 

  • 次に、患側上肢の肘関節を屈曲する

 

  • そして、この動きをゆっくりと繰り返す

 

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牽引した状態での神経モビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

神経モビライゼーション
  • 患者は座位か背臥位

 

  • 正中神経レベルのモビライゼーションを行う場合、患者は患側上肢の肩関節を伸展・外転・外旋、肘関節を伸展、前腕を回外、手関節を背屈、手指伸展し、家五男w患側に側屈する

  • 次に、患側上肢の肘関節を屈曲すると同時に、頚椎を患側と反対に側屈させる

 

  • この動きを繰り返す

 

  • セラピストが動きを誘導する場合、もう一方の手で患者の頭部を把持し、動きをコントロールする

 

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頭部の動きと同調した神経モビライゼーション

画像引用:頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法

 

 

 

参考文献

頚椎捻挫(むちうち損傷)と徒手理学療法 (理学療法学 第41巻第8号 622~629項 2014年 山内正雄)

 

肩関節周囲炎 炎症期・拘縮完成期・ディステンション・マニピュレーション・モビライゼーション・ストレッチ

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肩関節周囲炎

  • 肩関節周囲炎は、微細損傷などの炎症を起こすきっかけ

  ⇒ 炎症反応の進行と収束

  ⇒ 関節包や靭帯の瘢痕変性

  ⇒ 二次性拘縮による組織編成と進行し、凍結状態に至る

 

  • 炎症反応に拍車をかけることなく瘢痕変性を最小に抑えられたときは凍結状態に至らないが、不幸にも凍結状態に至った場合、その後の自然緩解に半年から1年を要する

 

 

1:病期と介入の考え方

1.発症直後 (炎症反応第1期)
  • 肩関節周囲炎は原因不明が特徴のひとつとされる

 

  • 加齢による変性を考えると、上肢の自重のみでも過負荷になり得る

 

  • 何気ない日常の動作が微細損傷を引き起こしている可能性が高い

 

  • この時点で安静が確保できればすぐに収束に向かうものと思われる

 

  • 痛みを無視せず、使わない配慮が必要である

 

 

2.炎症最盛期 (炎症反応第2期)
  • 炎症反応は、組織を修復するには必要な反応である

 

  • しかし、炎症に拍車をかけると、この後の瘢痕形成が重症化する

 

  • いまだに『痛くても動かさないとダメ』と指導されるのが一般的で、炎症反応の収束が速やかに進まない原因がそこにあると思われる

 

  • 痛みを伴わない強さの運動で可動域を維持することに主眼を置く

 

  • 可動域の拡大は狙わない

 

 

3.炎症収束期 (炎症反応第3期)
  • 一般的には、炎症反応が順調に進めば、受傷後7~10日で収束期が始まり痛みの緩和が加速する

 

  • ここから修復(瘢痕化)が始まるが、炎症が遅延すれば瘢痕組織が多く作られることになり、凍結に至る原因となる

 

  • 有害物質の除去と修復のために毛細血管が豊富に構築され、修復が進むにつれ減少していく

 

  • メカニカルストレスを与えることなく、新生した毛細血管に豊富に血液を供給することに主眼を置く

 

  • 痛みを伴うストレッチは行わない

 

 

4.拘縮完成期 (結合組織治癒過程の成熟期に相当)
  • コラーゲン線維がタイプ3からタイプ1へ変化し伸張性に乏しい瘢痕組織になる

 

  • 競技の凍結肩は、この瘢痕組織、二次性拘縮、滑液包の癒着による強固な拘縮である

 

  • 全身麻酔下においてさえ可動域の最終域感は変わらない

 

  • ストレッチに対する反応性はほぼないため、運動量による即自的変化は望めないが、炎症の再燃はないと考えて、伸張感を感じる程度のストレッチを行う

 

  • もし、即時的に変化が出た場合、肩甲上腕関節以外の部位が変化したか、完成された拘縮ではなく、筋の防御収縮や痛みが制限因子であったと考えるべきである

 

  • リモデリングのような変化を促すために、自動運動を多用したり、温熱療法を併用したりして血液循環や新陳代謝を高めることを考える

 

 

2:理学療法に併用される主な整形外科的治療

1.関節造影時のディステンション
  • 肩の痛みを訴える患者では、肩甲下滑液包が閉塞している場合が多く、特に肩関節周囲炎患者では高率に認められる

 

  • 腱板断裂の有無を確認することとあわせて、肩甲下滑液包の閉塞を開放することを目的に、関節造影とディステンションが行われる

 

  • 関節造影剤と局所安麻酔剤をあわせて約20~25mℓを関節内に注入する

 

  • 外転、内旋方向にマニピュレーション関節内圧が上昇し、その圧によって閉塞部位が押し広げられる

 

  • 軟部組織が伸張されるわけではないので、直後の可動域にはほとんど変化がないが、関節液が広がる空間が増えたことで、一気に内圧が下がるため、痛みが軽減し、この後の運動療法が行いやすくなる

 

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関節造影時のディステンション

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

2.全身麻酔下でのマニピュレーション
  • 保存療法に費やす時間がとれない患者や可動域改善に難渋する患者に対して、滑液包の癒着を剥離することと下部関節包の離開を狙って全身麻酔下でマニピュレーションが行われることがある

 

  • 実施後はほとんど痛みを訴えず大幅に可動域が改善する患者から、著名な腫脹を伴って実施前と変わらない硬さに戻る患者までさまざまである

 

  • 後者の場合も、腫脹の軽減に伴って可動域が改善していく

 

 

3.観血的癒着剥離術 + マニピュレーション
  • 腱板の不全断裂を合併している場合や、極度の可動域制限がある場合、観血的な方法が選択されることもある

 

  • 肩峰下滑液包、烏口下滑液包の癒着剥離、烏口上腕靭帯の起始部周辺での切離に加えて、挙上方向や回旋のマニピュレーションで、主に下部関節包の離開を行ってようやく可動域が得られる

 

 

3:可動域運動を行う際の工夫

1.肩峰下滑液包、烏口下滑液包、三角筋下滑液包の機能維持・改善
  • 肩峰下滑液包と烏口下滑液包は、烏口肩峰アーチと腱板の間の滑動性を保障する

 

  • 三角筋下滑液包は前2者と同じ深さにあり、より遠位部で上腕骨と三角筋の間の滑動性を保障する

 

  • 痛みの最盛期にはこれらの滑液包に水腫が存在する患者がいる

 

  • いずれも肩の可動域や痛みに直結する機能であり、癒着の増悪を防ぎたい

 

  • 肩峰下滑液包に対しては、烏口肩峰アーチのすぐ遠位で、徒手的に三角筋をずらすことで腱板との間隙を滑動させる

 

  • この操作を挙上角度を変えて行う

 

  • 烏口下滑液包は、烏口突起・烏口突起を起始とする筋の腱と肩甲下筋腱との間にあるので、三角筋をずらしても滑動させられない

 

  • 上腕骨頭を背側へ押すようにモビライゼーションすることで間隙を広げながら、肩水平内転や内旋方向への関節運動を行う

 

  • 三角筋滑液包は、肩峰下滑液包より遠位部で徒手的に三角筋をずらすことで上腕骨との間隙を滑動させる

 

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肩峰下滑液包のモビライゼーション

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

2.肩峰下インピンジメントがある場合

①解剖頸軸回旋を利用する

 

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解剖頸軸回旋模式図

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

 

  • 肩甲骨臼蓋面に上腕骨頭の解剖頸軸を垂直に立てたアライメントを保ったまま、解剖頸軸のスピン(解剖頸軸回旋)を行うと、大・小結節は烏口肩峰アーチの下に入り込まず、アーチと平行に動くことになる

 

  • よって、インピンジメントすることなく最終可動域までストレッチができる

 

  • 正常可動域(肩甲骨を固定した場合)は外旋方向に約75°、内旋方向に約55°である

 

  • 臨床では側臥位で行う

 

  • 135°の頚体角を相殺するために45°外転位、かつ30°の後捻角を相殺するために30°外旋位とし、肘と手の高さを変えることなく肩の挙上・下垂を行うと、肩の中では解剖頸軸回旋が生じている

 

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解剖頸軸回旋を行うための肢位

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

 

②プレスアウトストレッチ

  • 目的の筋をやや緊張下に置き、奥の空間に押し出すように徒手的に操作して、筋を押し伸ばすように直接ストレッチする

 

  • 骨運動を行わないので、インピンジメントがある患者や、炎症が激しいためにわずかな運動でも痛みが出る患者にも応用できる

 

  • ただし、押し出すための空間が必要になるため、適応できる筋が限定される

 

  • 大円筋、大胸筋、小胸筋、上腕三頭筋長頭に適応できる

 

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大円筋に対するプレスアウトストレッチ

画像引用:肩の運動療法の基本と実際 

 

 

 

 

参考文献

肩の運動療法の基本と実際 (Jpn Rehabil Med  Vol.54 No.11 2017 立花孝)