菱形筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『菱形筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
停止
- 大菱形筋:肩甲骨棘三角部から下角に及ぶ内側縁
- 小菱形筋:肩甲骨棘三角部の底辺を構成する内側縁
神経支配
- 肩甲背神経(C5)
作用
筋機能の特徴
- 肩甲骨内転に作用する
- 前鋸筋と協同して肩甲骨内側縁を胸郭に安定させる
- 肩甲挙筋、小胸筋と協同して肩甲骨下方回旋に関わる
筋連結
菱形筋 ↔ 前鋸筋
野球との接点
- 牽引型では菱形筋、僧帽筋中部線維による胸郭への肩甲骨の固定作用が低下している症例が多く、痛みの発生に強く関係している
肩甲背神経の絞扼
- 肩甲背神経はC5神経根から分岐後、前斜角筋の下を中斜角筋に向かって走行する。中斜角筋の筋腹を貫通すると、肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋の深部を通過して終止する。
- 絞扼の部位は中斜角筋・肩甲挙筋・菱形筋で、中斜角筋で絞扼しやすい
- 絞扼により、肩甲挙筋・菱形筋の機能低下により肩甲骨の上方回旋変位や内側縁の安定性低下が起こることがある
- 絞扼により、肩甲骨内側の鈍痛や上肢の痛みを起こすことがある
解剖学を学んでおいた方がよい理由
僧帽筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『僧帽筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
停止
- 上部線維:鎖骨外側1/3後縁
- 中部線維:肩峰の内側、肩甲棘上縁
- 下部線維:肩甲骨棘三角部
神経支配
- 副神経・頚神経(C2~C4)
特徴
作用
筋機能の特徴
筋連結
外側上腕筋間中隔
指伸筋群
野球との接点
投球肩障害
- 牽引型のケースでは、僧帽筋中部・下部線維の筋力低下を認める場合が多い
副神経麻痺
- 副神経麻痺による僧帽筋筋力低下から肩甲骨の安定化が失われ、翼状肩甲を呈する。長胸神経麻痺に伴う前鋸筋不全でも翼状肩甲は観察されるため、鑑別が重要となる。
- 副神経麻痺による翼状肩甲は肩関節外転時に著明となり、長胸神経麻痺による翼状肩甲は肩関節屈曲時に著明となる。
解剖学を学んでおいた方がよい理由
肩甲下筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『肩甲下筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
- 肩甲骨肋骨面の肩甲下窩
停止
- 上腕骨小結節
神経支配
- 肩甲下神経(C5・C6)
特徴
- 肩甲下筋は腱板を形成する4つの筋群の1つで、前方を支持する唯一の筋肉である
- 肩甲下筋にはいくつかの筋内腱があり、これらを中心に羽状筋の形態をとる
- 肩甲下筋の深層線維は関節包に直接付着している
作用
筋機能の特徴
- 肩関節内旋に作用する
- 肩関節の運動軸を上下にまたぐため、上方線維と下方線維群に分類して機能を考える必要がある
- 肩関節下垂位では上方線維群の筋活動の方が高い
- 肩関節90°外転位での内旋では、下方線維群の筋活動が高い
- 肩関節90°屈曲位では筋が弛緩する位置関係となり、その活動は低下する
筋連結
肩甲下筋 ↔ 棘上筋 ↔ 棘下筋 ↔ 小円筋
野球との接点
反復性肩関節脱臼
- 肩関節不安定症は外傷性と非外傷性に分類される
- 肩関節の外転・外旋強制に伴う前下方への脱臼後、十分な治療が行われず不安定性が生じたものを反復性肩関節脱臼(亜脱臼)とよぶ。
- 通常は前下方部の関節唇損傷(Bankart lesion)、MGHL、AIGHLの弛緩が存在する
- 肩関節の外転・外旋を強制すると強い脱臼感を訴える、Apprehension testが陽性となる
- 非外傷性の不安定症は習慣性肩関節脱臼(亜脱臼)とよばれ、非随意性と随意性に分けられる
腱板損傷・断裂
- 外旋制限を呈する場合、肩甲下筋は重要な制限因子の一つとなる
肩甲下筋の筋力評価:lift off test
- 手の甲を腰椎の後ろにあてる。手の甲を背骨から離すように持ち上げる。離すことができない場合、肩甲下筋の損傷を疑う
解剖学を学んでおいた方がよい理由
小円筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『小円筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
- 肩甲骨外側縁近位2/3
停止
- 上腕骨大結節の下小面
神経支配
- 腋窩神経(C5・C6)
特徴
- 小円筋は腱板を形成する4つの筋群の1つである
- 小円筋の関節包側の線維群は関節包の後下方部に直接付着している
作用
筋機能の特徴
- 肩関節外旋に作用する
- 挙上位における骨頭の安定化とともに90°屈曲位での外旋に作用する
- 肩関節外旋時の後方関節包の挟み込みを防止するとともに、挙上位における関節包の緊張を高め、骨頭を支持する
筋連結
肩甲下筋 ↔ 棘上筋 ↔ 棘下筋 ↔ 小円筋
野球との接点
腱板損傷・断裂
- 棘下筋に損傷がある場合には、その機能を補う形で小円筋の代償性肥大が報告されている
肩関節周囲炎
- 投球肩障害では小円筋の圧痛と攣縮ともに強い症例が多く、後方部痛発声の一要因となる
解剖学を学んでおいた方がよい理由
棘下筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『棘下筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
- 肩甲骨の棘下窩
停止
- 上腕骨大結節の後小面
神経支配
- 肩甲上神経(C5・C6)
特徴
- 棘下筋は腱板を形成する4つの筋群の1つである
- 棘下筋の上方の繊維は停止部で棘上筋とリンクしながら走行し、肩関節上方部を補強しあう
作用
筋機能の特徴
- 肩関節外旋に作用する
- 肩関節の運動軸を上下にまたぐため、機能上は上方線維群と下方線維群に分類される
- 肩関節下垂位では外旋の作用に対して上方線維群の筋活動が若干高い
- 肩関節外転90°での外旋運動では下方線維群の筋活動の方が高い
- 肩関節屈曲90°では棘下筋のより下方の線維群が収縮するのみで、外旋運動に伴う棘下筋の収縮はほとんど認めない
- 肩関節90°屈曲ではむしろ水平伸展筋として作用する
筋連結
肩甲下筋 ↔ 棘上筋 ↔ 棘下筋 ↔ 小円筋
野球との接点
腱板損傷・断裂
- 断裂において棘上筋から棘下筋に至る断裂は大断裂とされ、手術が適応となることが多い
棘下筋単独萎縮
- 野球ではないが、バレーボールのアタッカーでは棘下筋の単独萎縮例が散見される。萎縮の理由としては肩甲上神経の絞扼によって生じる説と、過度な内旋強制による部分断裂説がいわれている。
肩関節不安定症
- 後方不安定症が顕著な例では棘下筋を中心とした後方腱板の強化が非常に大切である
解剖学を学んでおいた方がよい理由
棘上筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『棘上筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
- 肩甲骨の棘上窩
停止
- 上腕骨大結節の上小面
神経支配
- 肩甲上神経神経(C5・C6)
特徴
- 棘上筋は腱板を形成する4つの筋群の1つであり、その中でも機能上最も重要な筋肉である
- 棘上筋と肩甲下筋の間には間隙があり、腱板疎部と呼ばれる
- 棘上筋の上面には肩峰下滑液包があり、棘上筋の滑り機能を円滑化している
作用
筋機能の特徴
- 肩関節外転に作用する
- 上腕骨頭中心からの距離が非常に近いため、外転力としての作用はそれほど強くない
- 下垂位からの外転において骨頭を関節窩に引きつける支点形成力の発揮が重要視されている
- 挙上位における棘上筋は起始と停止が近づくため、有効な支点形成力を発揮することができず、その支点形成機能は他の腱板筋群との協調のもとで作用する
筋連結
肩甲下筋 ↔ 棘上筋 ↔ 棘下筋 ↔ 小円筋
野球との接点
肩峰下インピンジメント症候群
- 野球、水泳、バレーボール等で多い障害の一つである
- 棘上筋は肩峰、烏口肩峰突起の下方を走行するため、外転に伴い衝突や挟み込みといった肩峰下インピンジメント症候群を発症しやすい
- 肩峰下インピンジメント症候群を確認するための代表的な徒手検査として、Neer sign、Hawkins-Kennedy signがある
- Neer sign:肩甲骨を固定し、肩甲骨上方回旋を抑制しながら肩関節を内旋強制位で上肢を前方挙上させる。この時、クリック音や痛みが再現できれば陽性である。
- Hawkins-Kennedy sign:肩甲骨を固定し、肩甲骨の上方回旋を抑制しながら肩関節90°外転外旋位から内旋強制を加える。この時、クリック音や痛みが再現できれば陽性である。
腱板損傷・断裂
- 腱板断裂のほとんどは棘上筋を含んだ形で存在し、完全断裂例の機能の再獲得には手術が必要である
腱板炎・肩峰下滑液包炎
- 重症例では棘上筋の収縮による疼痛が強いため、一見すると腱板断裂例と同様な挙上姿勢を呈する
解剖学を学んでおいた方がよい理由
広背筋
野球選手のための解剖学シリーズ!
今回は、『広背筋』について共有していきます。
起始・停止・神経支配
起始
停止
- 上腕骨小結節稜
神経支配
- 胸背神経(C5・C6)
作用
筋機能の特徴
- 肩関節伸展、内旋、内転に作用する
- 肩関節下垂位では広背筋が弛緩しているため作用は低い
- 上肢を挙上した肢位からの伸展・内旋作用が強力
- 肩関節外転90°では内転・内旋に作用する
- 肩関節屈曲90°では伸展・内旋に作用する
- 上肢を固定した場合には、骨盤の引き上げ作用(プッシュアップ)が主体となる
- 上肢を固定した場合には、胸郭を引き上げ吸気に関与する
筋連結
広背筋 → 胸腰筋膜 → 仙腸関節 → 大殿筋 → 腸脛靭帯 → 腓骨筋
野球との接点
広背筋症候群
- 広背筋の攣縮に伴う投球フォームの乱れ(具体的には肘下がりなど)が原因
- 腱板疎部損傷や肩峰下インピンジメントが生じることが原因
- 肩関節部に痛みを訴えることがある
広背筋挫傷
- 肩関節後下方部の硬さにより肩甲骨の過剰な上方回旋と外転による肩甲骨下角の摩擦が原因
- 背部に痛みを訴えることがある
解剖学を学んでおいた方がよい理由
投球障害肩症候群 Loose shoulder・肩峰下滑液包炎・上腕二頭筋長頭腱炎・腱板断裂・関節包炎・腱板疎部損傷・Little leaguer‘s shoulder・有痛性Bennett病変
- Over useによる悪循環
- Loose shoulder
- 肩峰下滑液包炎
- 上腕二頭筋長頭腱炎
- 腱板断裂
- 関節包炎
- 腱板疎部損傷
- Little leaguer‘s shoulder
- 有痛性Bennett病変
Over useによる悪循環
肩の痛みを主訴とするスポーツ障害は多岐にわたります。
- 肩関節前方亜脱臼障害
- Loose shoulder
- 肩関節後方不安定症
- 腱板疎部損傷
- 上方関節唇付着部断裂
- インピンジメント症候群
- 肩峰下滑液包炎
- 上腕二頭筋長頭腱炎
- 腱板断裂
- 関節包炎
- Little leaguer‘s shoulder
- 有痛性Bennett病変
投球動作を頻回に繰り返すこと(Over use)が直接的もしくは間接的に原因となっている可能性が考えられます。
投球期間や年齢が増えれば増えるほど単独の病変になる可能性は低く、複数の病変に加え、組織の変性・摩耗・瘢痕化の可能性が高くなってきます。
- 4つの腱板は強調して収縮し、常に骨頭を関節窩の安定なポイントに位置させようとしている。
- しかし、過度の投球数や不適切な準備や投球動作により腱板が疲労し、あるいは炎症を起こして拘縮し、その強調した収縮が妨げられる。
- すると、関節化と骨頭は良好な位置関係を保てなくなり、ズレが生じ関節窩上腕靭帯ー関節唇ー関節窩縁複合体に過度のストレスが加わる。
- この時の力は生理的限界に近く、その頻度が組織の修復スピードを上回れば複合体に障害が蓄積し、over useによる不安定症が発症する。
- この障害に伴う痛みは腱板の痙攣を引き起こし、さらに腱板の強調した収縮を妨げるという悪循環を成立させる。
- また、関節包の障害に伴い、そこに存在する伸張受容器も障害を受け、適切なフィードバックができなくなるとも考えられる。
中にはOver useでなくとも痛める場合もあります。
肩と肘の位置関係の崩れや腰の開きが速いなどの投球フォームの崩れ、手投げや下半身を上手く使えていないなど一ヵ所に負担がかかるような身体の使い方が原因となることもあります。
Loose shoulder
肩関節外転・外旋・伸展あるいは内転・内旋・にて、上腕骨頭の前方あるいは後方亜脱臼する力が加わり、動的・静的安定化機構へストレスが加わり炎症・弛緩・断裂を起こし、前方あるいは後方への不安定症を招く。
- 痛みの性質:抜けるような痛み、痺れ(脱臼感)
- 圧痛: 腱板疎部、結節間構など様々で非特異的
- 身体所見: sulcus sign、load and shift test、全身関節弛緩性
- 好発年齢: 10~20歳
- 画像検査: ストレスX線、関節造影、MR関節造影
肩峰下滑液包炎
烏口肩峰アーチ下において、機械的刺激を受け炎症を起こす。
これを繰り返すことにより慢性化し、非可逆的な肥厚、癒着といった変化をもたらすと滑液包が十分に滑動を起さなくなる。
- 痛みの性質:後側方~側方
- 圧痛: 肩峰下後側方
- 身体所見: painful arc sign、棘上筋抵抗テスト、impingement sign
- 好発年齢: 10~40歳
- 画像検査: MRI
上腕二頭筋長頭腱炎
肩関節外転・外旋にて緊張し、さらに烏口肩峰アーチ下において機械的刺激を受け炎症を生ずる。
また、ボールリリース、フォロースルー期においても張力が加わり障害を起こす。
- 痛みの性質:前方
- 圧痛: 結節間構
- 身体所見: Speed test、Yergason test
- 好発年齢: 15~40歳
- 画像検査: MRI
腱板断裂
第2肩関節において機械的刺激を受け炎症を起こす。
特に棘下筋は減速力源として作用し、遠心性収縮に伴う障害を受ける。
損傷部位はcritical areaには必ずしも限局せず、関節面の比較的後方に発生しやすく、その発生機序としてeccentric forceによるtensile stressあるいはshearing forceが考えられている。
- 痛みの性質:前方~外側
- 圧痛: 大結節
- 身体所見: delle、crepitus、painful arc sign、棘上筋抵抗テスト、impingement sign
- 好発年齢: 15歳~
- 画像検査: 単純X線、MRI、関節造影
関節包炎
- 痛みの性質:全体
- 圧痛: 非特異的
- 身体所見: 可動域制限
- 好発年齢: 15歳~
- 画像検査: MRI、関節造影
腱板疎部損傷
- 痛みの性質:抜けるような痛み、痺れ(脱臼感)
- 圧痛: 腱板疎部、結節間構など様々で非特異的
- 身体所見: sulcus sign、load and shift test、全身関節弛緩性
- 好発年齢: 10~20歳
- 画像検査: ストレスX線、関節造影、MR関節造影
Little leaguer‘s shoulder
発育期の上腕骨近位骨端線部は力学的脆弱部であり、投球に伴う回転トルク、筋張力により理解することがある。
- 痛みの性質:外側
- 圧痛: 上腕近位部後方
- 身体所見: 特異なものなし
- 好発年齢: 8~12歳
- 画像検査: 単純X線(必ず両肩)
有痛性Bennett病変
加速期における上腕三頭筋の活動、フォロースルー期における上腕三頭筋、小円筋、後方関節包に牽引張力が加わり骨性増殖がみられる。
- 痛みの性質:後方
- 圧痛: 肩関節後方下
- 身体所見: 最大挙上、外転外旋強制時後下方痛
- 好発年齢: 20~40歳
- 画像検査: 単純X線(挙上時)
『投球フォームの分析』 について復習したい方はこちら
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良い姿勢とは? 姿勢と動作の関係・前額面・矢状面・代表的な異常姿勢・後弯前弯型・後弯平坦型・平背型
『よく猫背になっているといわれる…』
『自分の姿勢は良い姿勢なのかわからない…』
今回は、そんな疑問を解決できるように正しい姿勢に関する知識を共有していきます!
姿勢と動作の関係
一流のスポーツ選手で姿勢の悪い選手は滅多にいないと思います。
すなわち、良い姿勢こそ、良いパフォーマンスに直結するということですね。
ピッチングやバッティングなどの動作の前段階である立ち姿勢によって筋力の発揮、関節の柔軟性、身体で感じる感覚などが左右されます。
動作が上手くいかない場合、立ち姿勢や競技動作の構えの姿勢をチェックしてみるのもいいと思います。
また、自分の姿勢の特徴を把握することもおススメします。
姿勢の特徴により、動きやすい筋肉、固くなりやすい筋肉などに分かれてきます。
それらの特徴や偏りにより、動作にも似た特徴が出てくることが多々あります。
その特徴を伸ばして自分の長所や個性にするのも一つの方法です。
逆に、偏りを矯正し、きれいな姿勢で滑らかな動きを獲得するのもありだと思います。
そのために、良い姿勢とは何なのかを理解する必要があります。
良い姿勢と自分の姿勢を比べ、自分の身体の気付きを増やす参考にしてもらえればと思います。
良い立位姿勢とは
よくいわれる良い姿勢とは、背筋を伸ばして、顎を引いて…などの表現がよく使われると思います。
では、具体的には何がどうなっているのが良い姿勢なのでしょうか。
前額面の正常な立位姿勢
前額面(人の体を前からみること)における正常な立位姿勢における重心線
- 後頭隆起ー椎骨棘突起ー殿烈ー両膝関節内側の中心ー両内果間の中心を通る
矢状面の正常な立位姿勢
矢状面(人の体を横からみること)における正常な立位姿勢における重心線
- 耳垂ー肩峰ー大転子ー膝蓋骨後面ー外果2~3㎝前方を通る
矢状面の各部のアライメント
- 頸椎前弯は約30~35°
- 胸椎後湾は約40°
- 腰椎前弯は約45°
- 仙骨底は第5腰椎に対して約40°前下方に傾斜
- 肩甲骨は前額面から前方に約35°傾斜
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/27/2/27_119/_pdf
姿勢を自分で確認する方法
角度を自分で測ることは難しいため、壁を使って簡単に確認する方法を紹介します。
壁に背中と踵をとつけて自然に立ちます。
壁と身体がついている部分を確認します。
後頭部・背中・臀部・踵のみがついていれば理想的といえます。
頚部・腰部には手掌約1~2枚分の隙間があるとなおいいですね。
前額面の各部のアライメント
- 頚、胸、腰椎が垂直
- 肩甲棘内側は第3胸椎棘突起と平行
- 肩甲骨下角は第7胸椎棘突起と平行
- 肩甲棘から下角までの肩甲骨内側縁は左右平行
- 角内側縁と胸椎棘突起の距離は約7㎝(成人男性において)
- 腸骨稜の頂点を結んだ線は第4腰椎棘突起と平行
前額面における代表的な異常姿勢
右利き(日本人の約89%といわれている)に多いパターンになります
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/27/2/27_119/_pdf
姿勢の特徴
姿勢の特徴
- 右肩下制
- 胸腰椎左凸
- 右骨盤挙上
- 右股関節内転・内旋位
- 左股関節外転位
短縮あるいは優勢筋
- 右外側体幹筋
- 左股関節外転筋
- 右股関節内転筋
- 左腓骨筋
- 右後脛骨筋
- 右長母指屈筋
- 右長趾屈筋
- 左腸脛靭帯
延長あるいは弱化筋
- 左外側体幹筋
- 右股関節外転筋
- 左股関節内転筋
- 右腓骨筋
- 左後脛骨筋
- 左長母指屈筋
- 左長趾屈筋
以上のアンバランスによる怪我のリスクとして、以下のものがある。
- 左膝蓋骨軟化症(立脚後期での膝関節過伸展による)
- 左大腿骨頭上外側面の退行性変化
- 左膝関節外側の退行性変化
- 右大腿骨頭内側あるいは中央面の退行性変化
- 右腸脛靭帯炎
- 右梨状筋と座骨との間でインピンジメント
- 右膝内側関節面の退行性変化
- 右足関節内反捻挫
矢状面における代表的な異常姿勢
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/27/2/27_119/_pdf
後湾前弯型
姿勢の特徴
- 頭部前方位
- 頚椎過伸展
- 肩甲骨外転
- 胸椎後弯と腰椎前弯の増強
- 骨盤前傾
- 股関節屈曲
- 膝関節軽度伸展
- 足関節わずかに底屈
短縮あるいは優勢筋
- 頚部伸筋群
- 腰部脊柱起立筋群
- 腸腰筋
- 大腿筋膜張筋
- 大腿直筋
- 前鋸筋
- 大・小胸筋
- 僧帽筋上部線維
- 肩甲挙筋
延長あるいは弱化筋
- 頚部屈筋群
- 上部脊柱起立筋群
- 外腹斜筋
- ハムストリングス
- 僧帽筋中・下部線維
- 菱形筋
- 前鋸筋(※翼状肩甲の場合)
前弯型
姿勢の特徴
- 骨盤前傾
- 腰椎前弯増強
- 膝関節軽度伸展
- 足関節軽度底屈
短縮あるいは優勢筋
- 腰部脊柱起立筋群
- 股関節屈筋群
延長あるいは弱化筋
- 前腹部筋群
- ハムストリングス
後弯平坦型
姿勢の特徴
- 頭部前方位
- 頚椎過伸展
- 上部体幹の後方変位を伴う長い胸椎後弯
- 腰椎平坦
- 骨盤中間位~後傾
- 骨盤前方変位を伴う股関節過伸展
- 膝関節過伸展
- 足関節中間位
短縮あるいは優勢筋
- ハムストリングス
- 内腹斜筋上部線維
- 腰部筋群
延長あるいは弱化筋
- 股関節屈筋群(1関節筋)
- 外腹斜筋
- 上背部筋群
- 頚部屈筋群
『姿勢』について復習したい方はコチラ
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カラダが固くなる7つの理由 運動不足・不良姿勢・繰り返しの作業・長時間の練習・怪我・ストレスと生活リズム・暴飲暴食
『準備運動やストレッチを毎日していたけど怪我をしてしまった…』
『ストレッチをした後は柔らかくなるけど、すぐ固さが戻ってしまう…』
今回は、 このような疑問を解決できるヒントを共有していきたいと思います!
- なぜ体は固くなったり動きにくくなるのか
- まずは自分の状態を知ることから始めよう
- 関節可動域制限発生のメカニズム
- 関節可動域制限とは?
- 2種類の結合組織
- 関節可動域制限の主な原因
- 筋による関節可動域制限
- 評価の手順
なぜ体は固くなったり動きにくくなるのか
練習前のウォーミングアップ、練習後のクールダウンやストレッチはほとんどのスポーツ選手がしていると思います。
また、競技以外では食事や睡眠などの生活面にも工夫をこらしている選手もいると思います。
では、ストレッチをした後は柔らかくなるけど、なぜすぐに固さが戻ってしまうのでしょう?
まず最初に、なぜ体が固くなるのか考えていきます。
体が固くなる、動きにくいなど変化が出るには何かしら理由があります。
その理由を考えずに、ボディケアだけに没頭してしまうのは決して効率が良いとは言えません。
肩が凝ってるからマッサージしてもらうとその時は楽だけど、明日にはもとに戻っているのと同じことです。
マッサージなど対処療法だけでなく、肩が凝る原因を考える必要があります(対処療法を否定しているわけではありませんので悪しからず)。
根本と思われる原因にも対処できることで、よりカラダの不調を改善しやすくなります。
良い状態をキープしやすくなります。
その方が練習などのトレーニングに多くの時間を使うことできます。
体が硬くなる原因をいくつか挙げていきます。
- 運動不足や長時間の同じ姿勢
- 不良姿勢
- 繰り返しの作業
- 長時間の練習
- 怪我・手術後
- ストレス・生活リズムの乱れ
- 暴飲暴食
1.運動不足や長時間の同じ姿勢
運動不足や長時間の同じ姿勢では、動かさないことで筋肉が固くなります。
部活動などでは、テスト期間中に運動不足があると練習再開の時に体が固くなっている実感がありますよね。
2.不良姿勢
不良姿勢では、固くなりやすい筋肉と柔らかい筋肉があります。
例えば腰が曲がっている姿勢では腹筋が短くなって固くなり、背筋が伸ばされて固くなります。
3.繰り返しの作業
同じ動作を繰り返すことで固くなりやすい場所に偏りがで出やすくなります。
例えば、野球のように右投げ右打ちの選手の場合、体を左に回転させる動作が多くなるため、同じ筋肉を酷使することで固くなる箇所があります。
カラダの左右のバランスを保つため、反対方向の素振りを行っている選手もいます。
4.長時間の練習
長時間の練習では、体の疲労や筋肉の微細損傷により筋肉が固くなります。
疲労により筋肉が正しく働かなることで関節や筋肉にダメージが加わります。
長時間の練習に耐えうる身体ができていないと怪我のもとになりかねません。
5.怪我・手術後
怪我・手術後では、筋肉の損傷や手術痕が治癒する過程で固さが残ることが多いです。
特に皮膚や皮下脂肪、筋膜の間が癒着することで動きが固くなります。
見た目では治っているため、固さが残っていることを自覚できずにプレーをしていると、その固さが原因で違和感が残ったり怪我につながる可能性があります。
6.ストレス・生活リズムの乱れ
ストレス・生活リズムの乱れでは、胸椎を主に固さがでることが多いです。
ストレスや睡眠時間が少ないことは自律神経に影響を及ぼします。
交感神経や副交感神経のリズムが崩れることで、胸椎に固さが出ることがあります。
7.暴飲暴食
暴飲暴食では、胃や腸など腹部の周辺に固さが残ることが多いです。
内臓の固さがでれば、その周囲にある筋肉に影響が出ることが予測されます。
また、内臓の動きが出にくくなることで呼吸が浅くなり横隔膜の動きも固くなります。
まずは自分の状態を知ることから始めよう
色々な原因からどの部位が固くなるのか、ザックリと説明させていただきました。
今回紹介したこと以外でも、身体に影響を与えることはたくさんあると思います。
そのため、まずは自分自身の状態を知ることから始めましょう。
身体面のチェック
- どのような立ち姿勢、座り姿勢をとっているか
- どこが柔らかく、どこが固くなりやすいか
- どこが疲れやすいか
- どのような歩き方をしているか
- 長時間同じ姿勢をとることはあるか
生活面のチェック
- 食事の量や内容、早食いしていないか
- 睡眠時間や質
- 普段ストレスを感じることがあるか
- ストレス発散を上手くできているか
このようなことを振り返り、もし身体に負担をかけていそうなことがあれば、それは改善するチャンスがあるということです。
ご自身のできる範囲で少しずつ見直していくことで、身体の良い変化を感じられるようになると思います。
逆に、負担をかけていることがあまりなければ、身体の状態に自信を持って練習を思う存分やるのみです。
関節可動域制限発生のメカニズム
関節可動域制限とは?
強直
- 関節構成体である骨・軟骨・補強靭帯などの変化に基づいておこる運動障害である
- リハビリの手技ではほとんど治療困難なもの
短縮
- 皮膚・筋・腱・神経・血管などの変化に基づいておこる運動障害である
- 完全に、またはある程度改善される余地のあるもの
2種類の結合組織
- 創傷部が治癒していく過程で、その部の運動が保たれていれば「粗」な結合組織ができてくる
- 運動が制限されると、「密」な結合組織が繁殖し、その部の運動性は著しく妨げられ、拘縮が発生する
粗
- 関節包・筋内結合組織層・皮下組織など
- いずれも常に動きのある場所
密
- 筋被膜・腱膜など
- 密な目の詰んだ網状をなしている
- 瘢痕などを作る
関節可動域制限の主な原因
- 筋 :43%
- 関節包:30%
- 皮膚 :19%
- 靭帯 :8%
筋による関節可動域制限
攣縮
攣縮による伸張性低下
- 圧痛所見 :(+)
- 伸張位筋緊張:(⇧)
- 短縮位筋緊張:(⇧)
- 脊髄腱反射 :(⇧)
リラクセーション(筋エネルギーテクニック)が適応
短縮
短縮による伸張性低下
- 圧痛所見 :(-)
- 伸張位筋緊張:(⇧)
- 短縮位筋緊張:(⇩)
- 脊髄腱反射 :(正常)
ストレッチが適応
評価の手順
次の3ステップにより評価を行う
- 自動運動
- 関節終端感覚
- 反復運動
1.自動運動
- 自動運動により、大まかに組織破壊や脆弱性の有無を見分ける
- 終端時痛(+):機能障害である可能性が高い ⇒ 関節終端感覚の評価へ
- 運動時痛(+):直接法は禁忌 ⇒ 以下の評価へ
- 3方向以上の動きで同じ部位が痛む:強い炎症の可能性あり ⇒ 手技療法は禁忌、隣接部位の評価とアプローチ
- 1方向のみ同一部位が痛む:弱い炎症の可能性あり ⇒ 関節法、もしくは隣接部位の評価とアプローチ
2.関節終端感覚
- 関節終端感覚により組織破壊や脆弱性の有無を分節的に見分ける
- 骨性の硬さ:重度の変形・癒合 ⇒ 手技療法は禁忌
- 硬い弾性力:機能障害の可能性 ⇒ 反復運動の評価へ
- 軟らかい弾性力:正常もしくは過剰運動・不安定性 ⇒ アプローチの必要性なし
3.反復運動
- 組織の緊張、短縮かスパズム、損傷かを10~20回の反復運動によって鑑別する
- 疼痛の軽減もしくは領域の減少、可動域の拡大:体性機能障害(緊張・短縮) ⇒ 直接的アプローチの適応
- 疼痛の悪化もしくは領域の拡大、可動域の減少:組織損傷やスパズム ⇒ 直接的アプローチは禁忌、関節法もしくは隣接部位の評価
個性を伸ばせ!FFS理論 自己分析・5つの思考行動パターン・保全性因子
『自分の個性ってなんだろう?』
『自分の個性はどうやったらスポーツに活かすことができるのか?』
今回は、そのような疑問を解決に導いてくれる考え方を共有しましょう。
自己分析
個性を伸ばすために、まず自己分析が欠かせません。
自分はどんな性格で、どういう特徴があるのかわかりますか?
自己分析のメリットとして、長所と短所がわかります。
長所を自分の強みとして生かすことで、突出した才能を作ることができる可能性があります。
逆に短所を補うことで、バランスの良い万能型になる可能性もあります。
どちらにとっても大切なことは、自分の性格や特徴にあったことをしているかどうかです。
また、自己分析ができることが他者理解につながります。
野球で例えると、チームメートがどんな性格かわかることでチームワークを高めることができますね。
FFS理論
古野俊幸氏の著書から得られた自己分析の方法を紹介していきます。
FFS(Five Factors Stress)理論とは、思考行動パターンを5つの因子とストレスで数値化したものです。
- 凝縮性因子
- 受容性因子
- 弁別性因子
- 拡散型因子
- 保全性因子
自分がどの因子になるのか判別するために15の質問に直感で答えます。
- 「持論を支持してくれない」同僚がいたら喧嘩になってでも説得しようとする
- 元気がない友達がいたら何とか元気にしてあげようとする
- 二度説明するなど無駄なことはしない
- 「閃いた」と思ったら後先考えずにまず動く
- 計画的に準備して進めようとする
- 「こうあるべきだ」とよく言っている
- 自分と違う考えを聞いたときに「なるほど、一理あるな」と思う
- 「データがない状態」では判断できないと思う
- 組織内にやりたいポジションがなければ外に探しに行く
- 仲間と一緒にいると安心できる
- 責任を果たすためなら部下の仕事をとり上げることもためらわない
- 状況や環境が変われば決まり事など柔軟に変えてもいいと思う
- あいまいなことは白黒はっきりとさせたい
- 「あんまり考えていないよね」と周囲から言われることがある
- 「丁寧できっちりしているね」と言われることがある
因子ごとに合計点を出し、合計点の高い順に3つの因子を並べます。
この3つがあなたの個性に影響を与えている第一因子、第二因子、第三因子です。第一因子(数値が一番高い因子)が最も影響を与えています。
保全性因子
日本人の65%は「保全性因子」といわれています。
ちなみに、私もバリバリの保全性因子でした(笑)。
それでは、保全性因子の特徴を紹介していきます。
- 確実に準備してから行動する
- 最初の一歩が踏み出せないときは周りの人を味方につけて背中を押してもらう
- 情報を幅広く集めて体系化するのが得意
- この領域ならだれにも負けない、と思えれば自信を持って戦える
- 誰かのために人生を懸けられる
- 少しずつ積み上げて成功実感を持つことに喜びを感じる
- 夢は現実的なところから生まれる
- 正しさより楽しさを好む
- 柔軟で寛容な個性のため1つに決められない
- 面倒見の良さと丁寧さを武器にする
- 周りの人達を元気にしたいので積極的に人間関係を作り会話を盛りあげようと動く
- 理屈で理解してもリスクをとることが生理的に嫌
- できることが好きなことになる傾向がある
- 自分の無能さが露呈するのを恐れて自信のないことは行動に移したがらず、なかなか一歩を踏み出すことができない
- 徹底的に情報を集めて抜け漏れなく対策を考えてようやく安心して行動に移すことができる
- 自身を持てるようになるには、できたという成功体験の積み重ねが必要
- 自分の型を磨くことで先の見通しが立ち力強く前進できる
自己分析をスポーツに活かす
練習では上手くいくんだけど、試合だと自信が持てなくなって本来の力を発揮できないことがあります。
保全性の特徴は、人前での失敗を恐れてしまい身体が思うように動かないことがあります。
失敗を恐れる傾向がありますが、逆に準備を人一倍して失敗を事前に回避するための努力を怠りません。
失敗を恐れないよう、指導者がサポートして導いていく必要もあります。
練習の難易度は頑張れば成功できそうな程度で、成功を積み重ねることで揺るぎない自信をつけ、本番でいい結果が出るようになります。
自信がある程度ついてきた頃には自分の型が定まり、一人でも目標に向かって進んでいく力が備わっています。
また、厳しいよりは楽しい雰囲気の練習環境の方が性に合っているでしょう。
チームスポーツでは、チーム内で自分の役割が見いだせないことがあるかもしれません。
保全性の特徴は、チームメートの状況を観察してどうしたらいいか考えることが得意です。
落ち込んでいる仲間がいるとき、放っておくことができません。
みんなが楽しめるように間を取り持つような役割が向いているでしょう。
誰かのために自分を犠牲にすることがあります。
自分自身のために、というよりは誰かのために何かをすることが原動力になります。
誰かの面倒をみることで、自らの存在を確認しています。
カリスマ的なリーダーというよりは、皆の話を聞き、同じ方向に向かせることができるスタイルのリーダーです。
また、面倒見がいい方のため、後輩の指導にも向いているでしょう。
アキレス腱断裂 受傷メカニズム・リスクファクター・診断・治癒過程・ケーラー脂肪体・怪我の予防・日頃のケア・体の使い方
今回は、アキレス腱断裂について解説していきます。
野球選手ではそれほど多くありませんが、過去には前田智則選手(カープ)、西岡剛選手(ロッテ)、最近では野上亮磨選手(ジャイアンツ)がアキレス腱断裂の怪我をしています。
怪我をしてしまった場合、復帰まで長期間を要するうえ、復帰後のパフォーマンスが戻らないと選手生命をも左右する大怪我です。
アキレス腱にまつわる知識を深めケガを予防できるよう役立ててもらえると幸いです。
アキレス腱断裂の病態
アキレス腱の受傷メカニズム
- 足関節背屈しながら、下腿三頭筋が急激に収縮した時や伸張された時が多いとされています。
- 具体的には全力ダッシュで踏ん張った時や、ジャンプの着地で受傷することがあります。
リスクファクター
- 30~40歳台でアキレス腱の退行変性がある場合、リスクが高くなります。
- スポーツ選手でアキレス腱に対して繰り返されるメカニカルストレスがある場合、腱が肥厚しリスクが高くなります。
- 既往歴に糖尿病・痛風・腎不全・リウマチがある、カルシウム拮抗薬・ニューロキノロン系拮抗薬・ステロイドの内服歴がある場合、受傷の頻度が多くなる傾向があります。
- 男女比は、5~6:1。
アキレス腱断裂の診断
アキレス腱部の陥没
好発部位
- アキレス腱付着部から2~6㎝上方 この部位はアキレス腱への血流部位が少ないため、損傷が起こりやすいとされています。怪我全体の70~80%に当たります。
- 筋腱移行部
- 踵骨付着部 踵骨剥離骨折を伴う場合があります。
トンプソンテスト
- 膝を直角に曲げた状態で腓腹筋をつまみます
- 正常であれば足関節が底屈します。断裂している場合は底屈しません。
レントゲン
- K:Kager's triangl アキレス腱の前縁、踵骨の上縁および足趾屈筋県の後縁で結ばれた脂肪組織で満たされている三角形の部分。
- K(+):Kager's sign 陽性 シャープな輪郭が焼失し範囲が狭くなり不明瞭となる。
- T:Toygar's angle 後方の皮膚表面のカーブが150°以下で異常
- A:Arner's sign 陽性 アキレス腱踵骨付着部周囲は断裂した腱が踵骨より遠ざかるカーブを描き、その近位では前方へと移動し、腱と皮膚線とが平行に見えない状態。
MRI
片足ヒールレイズ
- 断裂している場合、片足での爪先立ちができません。
アキレス腱の治癒過程
- 約3週:繊維組織の形成
- 約4~5週:瘢痕組織の再形成(リモデリング)、筋収縮に耐えうる強度の獲得
- 約6~7週:見かけ上の腱癒合と腱鞘様組織の再生
- 膠原組織を中心とした結合組織の増殖反応で、あくまでも瘢痕組織による治癒のため、本来の強度を取り戻すためには相当な期間が必要となります。
- 陥没部の消失は、受傷後平均3週±1.3週。
- 受傷後6ヶ月で左右差が残存するものが29%、8ヶ月で7%。
- 断端部にアキレス腱下脂肪体や主張したパラテノンなど介在物が存在しない場合にはアキレス腱修復率は6週で平均75%、10週で85%。
予後として…
- 足関節の可動域異常が保存例に多い(受傷1年後)
- 腓腹筋の萎縮が保存例に多い(1年後)
- 最終筋力は健側の89%(手術群、保存群ともに)
- 走行異常が保存例に多い
アキレス腱の解剖学
- 腓腹筋とヒラメ筋の合同腱
- 腱鞘はなく、パラテノン(アキレス腱周囲膜)で覆われる
- Kager's fat pad(ケーラー脂肪体)がアキレス腱へ血液供給を行う
ケーラー脂肪体の解剖学
部位
- アキレス腱深部
- 長母指屈筋の表層
- 踵骨近位部の隙間
役割
- アキレス腱、長母指屈筋の滑走性維持
- アキレス腱下、アキレス腱付着部の圧縮力軽減
- 後踵骨滑液包の摩擦軽減と内圧調整
- 後脛骨動静脈と脛骨神経の保護
脂肪体が硬くなる原因
- 足関節捻挫
- 外傷後のギプス固定
- アキレス腱炎
硬くなることで生じる影響
- アキレス腱、下腿三頭筋、長母指屈筋の滑走性低下
- アキレス腱付着部へのストレス増大
- アキレス腱の痛み
- 後踵骨滑液包の炎症
怪我の予防
- アキレス腱断裂は、トレーニングによるメカニカルストレスが繰り返されることで腱が肥厚し、その状態に瞬間的な力が加わることで発症します
- 怪我を予防するためには2つのポイントがあります。
日頃のケア
- アキレス腱や脂肪体、アキレス腱と連結している腓腹筋・ヒラメ筋、その周囲の腓骨筋や後脛骨筋の柔軟性を保つことが重要になります
- トレーニングをして体が疲労することで筋肉や腱は柔軟性を失います
- 何も対処せず放置してしまうと、その硬さはどんどん強くなってしまう可能性があります
- 練習後、特にアキレス腱やふくらはぎに疲労感や違和感を感じるのであれば、ケアが必要です
- 温めたりストレッチ・マッサージなどを行い、柔軟性の改善に努めましょう。
アキレス腱に負荷をかけ過ぎない体の使い方
- トレーニング後、アキレス腱やふくらはぎに疲労感や違和感を感じる頻度が多い選手は、体の使い方を工夫する余地があります
- 動作の中で、腓腹筋やヒラメ筋を酷使している使い方になっています
- 逆に、ハムストリングスや大殿筋を使えていない状態だと思われます
- ハムストリングや大殿筋の筋力はありますか?股関節の柔軟性はありますか?
- 体全体の筋肉をバランスよく使えるようになることで、1ヵ所に負担がかかることが少なくなります。
具体と抽象 問題解決の3パターン
『野球が上手くなるための練習メニューをどのように考えたらいいか…?』
今回は、そのような疑問を解決に導いてくれる思考法を解説していきます。
具体と抽象
その思考法とは、ズバリ、『具体と抽象』です。
細谷功氏の著書から得られた考え方を、スポーツに応用していきたいと思います。
練習メニューは、昔からあるオーソドックスなものや、YouTubeで紹介されているものなど、世の中にたくさん出回っています。
その中で、自分に合ったメニューはどれなのか?
とりあえずこの練習をしてみたら、パフォーマンスがアップした。
あの練習をしてみたけどあまり効果がなかった、など、良し悪しが分かれることは多々あると思います。
限られた時間の中で体力や技術を高めていくには、自分に合った練習メニューを取り入れていく必要があります。
そのための思考法が、『具体と抽象』です。
問題となっている具体例やデータなどに対して解決方法を考えていくことが『具体化』です。
目先の問題だけしか見えていない状態で、いわば、対処療法みたいなものです。
一時的に良い結果が得られるかもしれませんが、時間が経つと、結局もとに戻ってしまう可能性があります。
具体例やデータなど目先のことだけでなく、問題点を分析し、その背景や共通項は何なのか、物事の本質を捉えていくことが『抽象化』です。
抽象化することで、目先に見えていた問題だけでなく、その他に解決しなければならない新たなことがみえてきます。
こうして具体と抽象の行き来をすることで、根本的な問題解決につながり、大きなパフォーマンスアップの可能性を高めることができます。
具体とは?抽象とは?
一応、言葉の意味も確認しておきます。
具体とは…
物事が直接に知覚され、認識されうる形や内容を備えていること(goo辞書)
簡潔に表現すると、
- 個別性、特殊性がある
- 五感で感じられる実態
- 個々の属性(形、色、大きさなど)
- 正解がある
- 優劣が明確
- 答えが重要
抽象とは…
事物または表象からある要素・側面・性質をぬきだして把握すること(goo辞書)
簡潔に表現すると、
- 集合、一般的なもの
- 五感で感じられない概念
- 2者以上の関係性、構造
- 正解はない
- 優劣がわかりにくい
- 問いが重要
図で表すとこのようになります。
問題解決の3パターン
問題の解決は、抽象から具体へ向かっていくことです。
問題解決の3パターン
- 具体 → 具体 表面的な問題解決
- 抽象 → 抽象 机上の問題解決
- 具体 → 抽象 → 具体 根本的な問題解決
繰り返しになりますが、具体と抽象の行き来が、根本的な問題解決につながっていきます。
打者の練習メニューを考える
打者の練習メニューを考えていきます。
自分の目標は何なのか(抽象化)、その目標を達成するための練習メニューは何なのか(具体化)、を意識しながら考えます。
まずは、目標を設定します。
ここでは、ヒットをもっと打てるようになりたい、という目標を立てて話を進めていきます。
『ヒットをもっと打ちたい』を具体化していきます。
「安定したスイング、ボールとバットのコンタクト」
↓
「構えの姿勢の安定性、四肢の脱力」
↓
「体幹回旋・股関節回旋筋力、肩甲骨安定」
抽象度の高いことを具体化していくことで、解決できるヒントがたくさん出てきます。
その中から、自分が出来ていることと出来ていないことを把握します。
課題が明確になれば、あとは練習するのみです。
筋力トレーニングの原則 特異性の原則・過負荷の原則
『筋トレしてるんだけど、結果があまり出てなくて停滞してる…』
『筋トレするときに、何を意識したらいいかよくわからない…』
今回は、筋肉を効率的につけていく、筋トレを競技に活かしていくためのポイントを解説していきます。
筋力トレーニングの原則
筋力トレーニングを行う時に重要な原則が2つあります。
- 過負荷の原則
- 特異性の原則
ここでは、特異性の原則について解説していきます。
特異性の原則
特異性の原則とは、『ある種の能力は、同様の運動を用いたトレーニングによって効果的に高められる』というものです。
特異性の原則を細かく分類すると、以下の3つがあります。
1.筋の収縮様式からみた特異性
2.負荷様式からみた特異性
3.動作様式からみた特異性
この原則を理解して、競技の動作分析や自身の動作分析に利用してほしいと思います。
ただ単に練習をするだけでは、決して効率的とはいえません。
筋の収縮様式や動作様式などをヒントに競技動作を分析して、どのような筋肉をどのように動かすと良い動きになるのか理解します。
自身の動作分析もして、照らし合わせます。
何が自分に足りないか発見することができ、自ずとやるべきことがみえてきます。
筋の収縮様式からみた特異性
目的とする動作に限りなく近い収縮様式でトレーニングをした方が効率的になります。
収縮様式には、等尺性・遠心性・求心性・等速性収縮などがあります。
上腕二頭筋で説明します。
手にダンベルを持った状態で…
肘を曲げて体に近づける動きを求心性収縮といいます。
肘を伸ばして体から遠ざかる動きを遠心性収縮といいます。
走るとき、地面を蹴る動作では、大殿筋・ハムストリングス・下腿三頭筋の求心性収縮の力を利用します。
求心性収縮のトレーニングをすれば、地面を蹴る動作が強化され、走るスピードが改善する可能性が高くなっていく、ということですね。
負荷様式からみた特異性
最大筋力を増加させたいときは、負荷を100%でトレーニングした方が最も効果が大きくなります。
逆に、最大速度を増加させたいときは、負荷を少なくして最大速度でトレーニングした方が効果が大きくなります。
下図は、トレーニングの負荷を変えて行うとどの要素が変化するのかを表しています。
動作様式からみた特異性
主動作筋が同一であっても、動作様式の違いにより筋力の増加率に差異が生じます。
また、トレーニング動作における発揮筋力の増加率に比較して、他の動作様式での増加率は低いとされています。
下図は、スクワットトレーニングを8週間行った時の筋力の増加率を示したものです。
スクワットは、大腿四頭筋・大殿筋・ハムストリングスを強化するトレーニングです。
垂直跳や立幅跳にも必要な筋力ですが、1番変化率が高かったのはスクワット1RMになり、動作様式からみた特異性が証明されています。
過負荷の原則
過負荷の原則とは、『筋肥大・筋力向上を目的としたとき、日常生活でかかる負荷よりも強い負荷をかけると効果が期待できる』というものです。
例えば、スイングの最速ヘッドスピードが120キロあったとします。
もっと早くしたいときは、120キロ以上のスピードで練習をすれば効果が期待できるということです。
具体的には、以下の条件を満たすことが必須となります。
1.運動の強度
2.運動の持続時間
3.運動の頻度
運動の強度
筋力アップのためには、最低でも70%1RM以上の強度が必要になります。
さらに効果的にするためには、90%1RM以上の強度が必要なります。
RM(Repetition Maximum)とは、『反復最大負荷』ことで、繰り返すことが可能な限界の回数を指しています。
%1RMとは、1RMに対する割合のことです。
70%1RMは、12~15回を繰り返すことが可能な強度にあたります。
筋力がついてきてフォームを固めるためには軽い負荷で繰り返し練習ることが必要です。
運動の持続時間
負荷をかける時間を長くすることで、結果として 、短い時間の負荷より効率的に筋肥大を促すことができます。
具体的には、同負荷でレッグエクステンション(膝伸展)を行うとき、片方の足だけ、約8倍長い筋緊張持続時間をかけました。
トレーニング後、筋タンパク質合成レベル(筋肥大レベル)の差異を測定しました。
その結果、筋タンパク質合成レベルは、114%上昇しました。
短い負荷時間の足は、わずか77%の上昇に留まりました。
さらに、トレーニング終了24時間後も、筋タンパク質合成レベルは高いレベルを維持していることがわかりました。
運動を継続した方がいい期間についてはトレーニングを開始して20週目までは主に神経系の要因により、さらに、10週目以降は筋肥大の要因も加わり、筋力が強くなります。
神経系の要因は20週目以降では頭打ちになりますが、逆に言えば、何かしらトレーニングをすれば20週目までは必ず筋力は強くなる、ということですね。
それ以降で筋力を強くできるかどうかは、どれだけ筋肥大を起こせるかにかかっているということです。
運動を継続した方がいい期間については、以下も参照してください。
運動の頻度
トレーニングの間隔は、36時間開けた方がよいといわれています。
その理由として、筋タンパク質合成レベルやピークトルクが元の状態に戻るために必要な時間だからです。
筋力がしっかりと発揮できない状態で毎日同じ部位をトレーニングをしても、決して効率がよいとはいえません。
同一部位は2日置きにして、鍛える部位を変えるなどして、トレーニングを計画的に組めば時間を有効に使えますね。
まとめ
・目的とする動作に限りなく近い収縮様式でトレーニングした方が効率的である
・負荷100%でトレーニングしたときは最大筋力に、負荷0%・最大速度でトレーニングしたときは最大速度がに効果が出やすい
・主動作筋が同一であっても、動作様式の違いにより筋力の増加率位に差異がある
・最低でも12~15回繰り返すことが可能な強度で行うと、筋力は強くなる
・筋への負荷時間が長いほど、筋肥大を効率的に促すことができる
・同部位のトレーニング後は、36時間間隔を開けて行う方がよい
参考文献
筋力トレーニングの基礎知識 -筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズム-
(京都大学医療技術短期大学紀要別冊 健康人間学 第9号 市橋則明)